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ニューヨークでの話、うだつの上がらなかったクオイル(ケヴィン・スペイシー)だが、突然に飛び込んできた女性ペタル(ケイト・ブランシェット)が、強引に彼をベッドに誘い、たちまち結婚する。 この出会いがよくわからないから、何がなんだか判らないままに、物語は進んでいく。 ペタルの交通事故死によって、クオイルはニューヨークでの結婚にやぶれる。 彼は小さな娘バニーと一緒に、雪に閉ざされた田舎のニューファンドランド島に移住する。
ペタルは自由で、とんでもなくいい女。 それに対して、クオイルは父親コンプレックスのさえない男である。 この二人が結婚するのが不思議だが、とにかく子供バニーができる。 しかし、ペタルはクオイルや子供をほったらかして、他の男と遊びまわり、あげくの果てには交通事故で死んでしまう。 そこへ叔母アグニス(ジュディ・デンチ)が登場し、残されたクオイルとバニーそれに叔母のアグニスは、先祖の出身地であるニューファンドランド島へと向かう。 そこは小さな漁港の街で、クオイルは地元の新聞社に職を得る。 いくら田舎の新聞社だとはいえ、まったく経験のない人間が、不思議なことに採用されてしまう。 彼は訳ありの未亡人ウェイヴィ(ジュリアン・ムーア)と交際を始める。 彼女にはハンディギャップのある男の子がいた。 結局、クオイルとウェイヴィは、家族ぐるみでつきあいを始め、やがて結ばれるところで映画は終わる。 父親からの虐めにあって、アダルト・チャイルド化したクオイルは、さえない人間になってしまった。 何をやっても自信がもてない。 都会で傷ついた人間は、田舎で癒されるという主題だが、ご都合主義と希望的な観測に満ちた映画である。 「ギルバート ブレイク」や「サイダーハウス ルール」で優れた視線を見せたこの監督は、家族しかもアメリカの家族には、ほとんど信をおいていないようだ。 この映画では、軽薄なペタルが男から男へと渡り歩き、クオイルもそのうちの一人にすぎないことから、物語を始める。 まずペタルの存在そのものが、否定的にとらえられており、古典的な終生のつがい関係を懐かしんでいるようだ。 女性の台頭により、男性がかつての男性らしさを失い、積極性を失っている。 この監督には、時代がそう読めるのだろうか。 都会で傷ついても、都会は癒してくれない。 癒してくれるのは、自然のあふれる田舎というわけだろう。 だから、訳ありの未亡人でも、田舎の人は温かくそっとしておいてくれたというのだろう。 しかし、それは変だ。クオイルの先祖は海賊で、村の人に殺されたというではないか。 むしろ田舎こそ、常識から逸脱した人間を許さず、つまはじきにしていく。 ウェイヴィが妊娠八ヶ月だったとき、夫は十代の女性と駆け落ちしたのだ。 それを彼女は、心の傷としてもっているので、夫が死んだことにして、訳あり風を装っていたというわけだ。 それに叔母アグニスは、兄であるクウイルの父親に強姦されたのだという。 それが心の傷で、故郷をでていたが、兄の死によって帰郷した。 駆け落ちされたウェイヴィを、村人がそっとしておいてくれたので癒されたというが、二人の事実は矛盾している。 田舎の人は、逸脱した人を好奇の目でみる。 というより、田舎の生活は共同体に負う部分が多いので、否が応でも他人の生活を、監視するような仕儀にならざるを得ない。 相互扶助といえば聞こえは良いが、相互監視の社会を作らないと、農耕社会では生きていけない。 この映画の舞台は、漁民だから農民より少し個人色が強いが、それでも共同体からの縛りが強いことは大同小異である。 常識を逸脱しても生活していけることが、人間存在を丸ごと認めているのであり、個人を個人として尊重している証である。 人間はどんな状況でも、傷つくときは傷つく。 クオイルは都会だから女性と巡り会えたのであり、田舎にいたら彼には女性が巡ってこなかっただろう。 女性と巡り会ったことによって、彼は傷ついたかもしれないが、女性と巡り会わなくても彼は傷ついたに違いない。 もちろん傷の形は違うが、彼は女性関係に飢えたかもしれない。 その意見を封じるために、監督はクオイルを父親コンプレックスという設定にしたのだろうが、展開がご都合主義にすぎる。 都会は他人をそっとしておいてくれる。心の傷に触らないのは、すぐれて都会人である。 この映画は、アメリカ人とイギリス人が参加している。 主役はケヴィン・スペイシーとジュリアン・ムーアのアメリカ人だが、ジュディ・デンチやピート・ボスルスウェイトなどイギリス人も重要な役を演じている。 アメリカ人とイギリス人の演技は、どことなく違っていた。 ケヴィン・スペイシーは外来者だから良いとしても、ジュリアン・ムーアは地元の人間だから、もっとイギリス人風を出しても良かったのではないだろうか。 2001年のアメリカ映画 |
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