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舞台は1990年代、旧ユーゴスラビアの民族紛争が一応解決し、停戦協定により和平が結ばれているボスニアである。 あと二週間で帰国できると考えていたクリス(オーウェン・ウィルソン)とスタックハウス(ガブリエル・マクト)は、クリスマスにもかかわらず偵察飛行にでる。 飛行禁止区域に、武器のようなものを発見する。 飛行禁止区域への進入は御法度だったが、2人は偵察してみることにした。
政治の世界は魑魅魍魎である。 停戦を言いながら、セルビア人民軍は飛行禁止区域に大きな武器を隠していた。 この偵察機がとらえたのは、大規模な違反の軍備だった。 停戦違反を知られたセルビア人民軍は、飛行禁止区域に入った飛行機めがけて、ミサイルを発射した。 ボスニアでの内戦が終結しそうなとき、監視活動の飛行機が撃墜された。 撃墜された2人は落下傘で脱出するが、スタックハウスはセルビア人民軍に射殺されてしまう。 クリスは逃げて救助を待つ。 しかし、逃亡の過程で、大変な事実を発見する。 人種浄化という名の大量虐殺だったが、それは表沙汰にはならなかった。 そのまま停戦が実現してしまえば、闇に葬られるところだった。 秘密を知られたセルビア人民軍は、クリスを執拗に追ってくる。 もう一つの流れは、NATO軍の内部事情である。 アメリカ軍は直ちに救援活動に入ろうとするが、停戦の崩れることをおそれるNATO軍はそれを許さない。 クリス救出にこだわるレイガート司令官(ジーン・ハックマン)は、その任務を解かれてしまう。 しかし結局は、アメリカ主導でクリスは救出され、クリスのもたらした秘密によって、セルビア人民軍の虐殺が明らかになる結末である。 この映画の見せ場は、F:A−18戦闘機対ミサイルの空中シーンと、クリスが逃げる途中での出来事である。 ボスニアという戦場の様々な兵器や、人間関係などが細かく描かれている。 主題は玉虫色の解決をしたがるNATO軍への批判だろうが、クリスが海軍に入ったのは戦闘をしたかったためだという台詞には、ちょっと考えさせられる。 戦争の花形は、戦闘であろう。 しかし、激しい戦闘は、戦いのほんの一部である。 そして、戦いのためには、偵察や訓練・兵站などが、きわめて重要である。 戦争は政治の失敗でもあり、その意味では、闘わずに勝ったほうがいいことは自明である。 とすれば、闘うことより闘わないほうが、上首尾である。 軍需産業が利益をあげようすれば、闘ってたくさんの兵器を消耗させたほうが良いだろう。 戦闘とは何よりも消耗なのだから、軍需産業は闘わせたがる。 しかし、ボスニアなどバルカン半島を初めとして、ヨーロッパ諸国は戦争慣れしている。 直接的な戦闘がいかなる意味を持つか、充分にわかっている。 だから狡猾で複雑な対応をする。 アメリカは自国の領土が戦場になったことはないし、自国の存亡が問われたことはない。 そのため、政治にかんしては実に単純である。 政治力では、とてもヨーロッパや中近東・中南米諸国には、太刀打ちできない。 それは映画作りにも反映されており、戦闘を描くとすごいが、戦争はまったく描けない。 自国を問うベトナム戦争は映画化できても、他国間の戦争であるヨーロッパ戦線には、まったくの盲目である。 しかし、「地獄の黙示録」は、戦争を舞台にした一種の哲学の映画であり、戦争の映画ではない。 この映画は戦争の映画である。 戦争映画とは戦争を描きながら、その背景や当事者間の思惑を感じさせるべきなのだが、この映画ではアメリカ側からの一方的な主張になっている。 飛行機の精巧なモックアップまで作って、画面は実物を忠実に再現している。 しかし、戦艦や飛行機などのディテールが、精巧であればあるほど、政治性の単純さが浮かび上がってしまう。 それがなんとも、子供じみた仕上がりにしか見えない。 こうした映画が、軍事オタク的な幼児性にしか受けない所以だろう。 ドンパチの娯楽映画としては良いかもしれないが、製作者たちが幼いと言われても仕方ない。 アイルランド出身の31歳という若い監督のせいもあるだろうが、アイス・キューブやコカコーラなどをもちだしての、アメリカ文明の賛美はちょっと首を傾げたくなる。 アメリカ文明はわかりやすいから、世界中で受け入れられるが、この映画で取り上げる必然性は感じない。 むしろ違和感があった。 2001年のアメリカ映画 |
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