タクミシネマ          猿の惑星

猿の惑星   ティム・バートン監督

 「猿の惑星」といえば、1968年に公開されたフランクリン・シャフナー監督が撮った映画である。
今回の映画は、そのリメイクとも言うべきものだ。
アメリカではリメイク物がたくさんつくられるが、違う作品として鑑賞に耐えれば、それはそれで良いだろう。
ちなみにこの映画は、前作と同じリチャード・ザナックが製作にあたっている。

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劇場パンフレットから
 宇宙のある星に行ってみると、人間より猿のほうが優秀で、人間は猿の奴隷状態だった。
宇宙飛行士のレオ(マーク・ウォルバーグ)は、奴隷状態には耐えられない。
人間たちをまとめて反乱をおこし、人間と猿の共存する社会をつくる。
平和になったので彼は地球へ戻るが、何と地球こそ猿に支配されていた、というエンディングである。

 SF映画というのは、とりたてて主題を持ち込むことが難しい。
未来の設定だというだけで、社会の前提が仮想のものになってしまうので、主題の鮮明さより未来社会のほうに目がいってしまう。
この映画では、とくに人間と猿の序列が入れ替わっているので、まずその入れ替わりに驚いてしまう。
人間より猿のほうが優位であることが異常なのだ。
しかし、人間と猿の立場を入れ替えることは、逆に人間を相対的に見ることになるのだが、この映画ではそれは強調されていない。


 人間社会の猿として最初に登場する宇宙飛行士の猿が、偶然にもレオを救う顛末になる。
人間社会の猿と人間の関係と、猿の惑星の猿と人間の関係が、いわば二重の入れ子構造になっている。
このあたりは面白い。
かつての映画なら、猿の支配を打ち破るというエンディングだろうが、この映画では猿と人間を共存させている。

 このままで終わるなら、毒にも薬にもならない。
平凡な終わり方である。
それをもう一度、猿の支配へと逆転させている。
ここに映画の言いたかったことがあるようだが、あまりにも最後の最後なので、何を言いたかったのか充分には伝わってこない。

 やはりこの映画は、大規模なSFXと空想の猿社会を、単純に娯楽作品として見るべきだろう。
猿の擬人化はうまくできており、人間におおくの人種があるように、猿にも何種類もの猿種を登場させている。
この猿のイメージをつくるのは、大変な作業だったと思う。
特殊メイクで猿をつくるの作業は、リック・ベイカーが担当している。


 最後の決定には、監督の承認が必要だろうが、おそらくリック・ベイカーの提案がたくさんあったはずである。
こうしたイメージをつくるには、一人で作るとどうしても同じ発想になってしまうので、大勢で作ったほうが良い。
この映画での製作は、なかなかにうまくいっている。

 猿のメイクをしている俳優さんが、とても迫力がある。
そのため、人間のほうに迫力不足を感じてさえしまう。
ふつうの着衣であるレオはともかくとして、猿の惑星にいる人間たちは妙なものだ。
原始人のようにボロ布をまとっているのだが、顔こそ汚しているものの、身体がすべすべである。
ジャングルのなかを走りまわれば、身体は傷付くはずである。
身体のすべすべさが、迫力不足を生んでいるのだろう。

 この映画の問題は、猿より人間のほうにある。
裸足で歩いている人の足は、ゴムのように堅くなっている。
また原始社会では、皮膚病や眼病が多いはずでもある。
人間がきれいすぎた。
とくにディナを演じたエステラ・ウォーレンは、身体がきれいすぎて、何か場違いだった。
スーパー・モデルだった彼女はスタイルがよく、力が必要な原始社会に生きているようには見えなかった。
それにしても裸が不自然で、着衣が自然という人間なる生き物は、自然界では異常なのかもしれない。


 物語のなかで重要な位置を占めていても、アリ(ヘレナ・バナム=カーター)やセード将軍(ティム・ロス)にかぎらず、猿の衣装になってしまえば、誰が誰だか判らない。
特殊メイクで俳優が出演するのは、何だか俳優さんには気の毒のようだ。
表現をするうえで最も有効な顔を、メイクで隠されてしまうので、表情を伝えることができない。
そういった意味でも、主題の演出ができにくくもなるから、娯楽作品としてSFXを楽しんだほうが良い。

 「ナイトメアー・ビフォー・クリスマス」「マーズ・アタック」や「スリーピー・ホロー」など、ティム・バートンは優れた映像感覚の持ち主だと、以前から思っていた。
この映画のように、大勢の人がかかわっている場合は、個人の美意識が強烈にはでない。
それでも、画面の端々に彼特有のセンスがうかがえる。
とくに画面の上を空として抜いてしまわずに、かぶせるようにして使うのには、独特のものがある。
劇場パンフレットによれば、衣装や小物の多くを、監督がデザインしているという。

 しかし、これだけのお金をかけて、はたして採算はどうなったのかと、いささか心配にもなった。

2001年アメリカ映画

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