タクミシネマ          ベティ サイズモア

ベティ サイズモア     ニール・ラビュート監督

 ソープ・ドラマに熱中する女性べティ(レニー・ゼルウィガー)は、夫デル(アーロン・エックハート)が殺されるのを目撃する。
しかし、彼女は死んだ夫をおいたまま、テレビ・ドラマの主人公デヴィッド(グレッド・キニア)を追って、カンサスからロス・アンジェルスに向かう。

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劇場パンフレットから
 彼女はドラマのヒロインになったつもりで、自分は看護婦だと信じ込んでいる。
現実とドラマの混交が生みだす珍事が、行く先々で繰り広げられる。
ローサ(ティナ・テキサーダ)の家に同棲し、とうとうドラマの主人公デヴィッドにであう。
なんと彼女は、デヴィッドことジョージと仲良くなってしまい、ドラマに出演させられるが、大失敗。

 夫は麻薬の取引をしており、その関係で殺された。
しかし、麻薬が見つからないので、殺した二人組チャーリー(モーガン・フリーマン)とウェズリー(クリス・ロック)が彼女を追いかけてくる。

地元カンサスの保安官と新聞記者も、彼女を追いかけてきて、ローサの家で全員が遭遇する。
そこで派手な撃ち合いになり、二人組は死んで、彼女はカンサスに帰る。
しかし、この事件が新聞にでたことから、ベティはその後のドラマに出演することになる。
今度は成功し、その後63本に出演したという説明が入って映画は終わる。

 現実と虚構であるドラマの区別がつかなくなり、自分をドラマのなかにおいてしまう。
自分が映画の主人公になった気分になるのは、良くある話だ。
ヤクザ映画を見終わって映画館からでてくるときは、多かれ少なかれ誰でも肩で風を切っている。
しかし、普通はすぐに現実に戻る。
この映画の主人公は、完全に没入してしまった。
ドラマを演じている人やそれをドラマとして楽しんでいる人たちと、彼女のすれ違いをコミカルに描いたのだが、不思議なタッチである。


 虚実の組合せが上手くできており見て損はないが、この手の映画の常として、ご都合主義のオンパレードである。
病院前の襲撃事件といい、看護婦としての採用といい、あり得ない。
とりわけ、ローサの家に全員集合する場面は、まったくゼロの確率である。


 しかし、コミック映画には、この手のご都合主義は許されるだろう。
そうしたことに目をつぶれば、そこそこに楽しめる。
虚実の混交は、情報社会の云々といわないほうが、この映画には良いような気がする。
映画製作者たちはそこそこに考えているのだろうし、相当にお金もかかった映画だが、なんだか妙にぬけた映画でもある。

 ベティを演じたレニー・ゼルウィガーは、「エンパイヤー・レコード」などインディペント出身だが、いまや完全にメジャーの俳優になった。
彼女の演技はややオーバーな感じがするが、それでも充分に上手いといえるだろう。
また、モーガン・フリーマンが今までとは違う役柄で、妙な味があった。
二人組のチャーリーとウェズリーが、親子だったというのは、よく判らない設定だった。
錦鯉から、ローサと新聞記者のロイ(クリスピン・グローバー)が、恋人になるのは愉快だった。
ロバート・レッドフォードとよく似たグレッド・キニアは、アメリカの正統派美男子なのだろう。

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