タクミシネマ      ウーマン・オン・トップ

ウーマン オン トップ       フィナ・トレス監督

 この映画のタイトルだけ聞くと、女性の台頭する映画かと思う。
女性の台頭を主題とするのすら、映画としてはもう古いのだが、内容は女性の台頭とはまったくの正反対である。
古い古い感性の映画で、良いところは一つとしてなく、途中で退場しようとしたくらいである。
ブラジルとアメリカを舞台にしたハリウッド映画だが、あまりのひどさに言葉を失った。

ウーマン・オン・トップ [DVD]
 
前宣伝のビラから

 ブラジルでの話。
天啓によって結婚したイザベラ(ペネロペ・クルス)とトニーニョ(ムリロ・ベニチオ)は、二人でレストランを経営する。
レストランは大当たりだったが、コックのイザベラは厨房に閉じこめられたと、不満が鬱積する。
下働きはもう嫌、トニーニョの上になりたいと言いだす。
セックスでも何でもイザベラが上の生活が三年ほど続くが、トニーニョはたまには上になりたいと浮気をする。
これが一発でばれて、イザベラはサンフランシスコにいる友人のモニカ(ハロルド・ペリノー、jr)の元へ逃亡する。
トニーニョはイザベラが忘れられず、サンフランシスコへ追いかける。

 イザベラはサンフランシスコでも料理の才能を発揮し、テレビに出て有名人になる。
その後でいろいろあって、二人がもとの鞘に納まるという内容だが、話の展開が平凡でまったく面白くない映画である。
この映画はスペインの有名女優ペネロペ・クルスを、ハリウッドで売り出すためのものだろうと思う。
しかし、彼女は下手な演技、台詞の棒読みなど目を覆うばかりである。


 彼女はスペイン人だから、英語が下手なのは仕方ないとしても、まったく感情の入らない台詞は、俳優とは言いがたい。
オープン ユア アイズ」でのソフィア役が良かったのは、最後の屋上のシーンだけで、しかも彼女に台詞がなかったからである。
オール アバウト マイ マザー」でも決して上手い役者ではなかった。
スペインでは彼女は、なぜ人気があるのか不思議である。

 映画のスタイルとしても現代映画とは呼びがたい。
大時代的な設定、内部批判眼の不在など、見るに耐えない映画である。
天啓により二人が結ばれるのはともかく、男性の浮気から別居し、それを許す女性へと展開するあたりには、女性の主体性がまったくない。
男性の活動性と女性の受動性が、浮き立つだけである。
これでは女性蔑視も甚だしく、女性の台頭に棹さす映画である。
映画批評を書くこと自体に徒労感を感じる。
女性監督だからどうこうというより、企画それ自体の誤りである。

2000年のアメリカ映画。

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