タクミシネマ          ワールド・イズ・ノット・イナフ

ワールド・イズ・ナット・イナッフ  
    マイケル・アプテッド監督

TAKUMI−アマゾンで購入する
ワールド・イズ・ノット・イナフ (アルティメット・エディション) [DVD]
 007シリーズも19作目と随分と長くなってきた。
ピアス・ブロスナンが主演するようになって、何作目だろうか。
残念ながら、今回は面白くなかった。

 ソ連の崩壊によって生じた小国が、石油の産地になっている。
そこの利権を持っているエレクトラ(ソフィー・マルソー)が、ヨーロッパへとパイプラインを引く。
しかし、トルコ経由の別ルートがあり、必ずしも彼女のルートが使われるという保証はない。
そこで、プルトニウムを盗んでイスタンブールを放射能で汚染させる。
そうすれば、必ず彼女のパイプラインを使うので、彼女は儲かるという計画である。
その儲けにしては、コストがかかりすぎのように思うが、まあそれは問わないことにしよう。
とにかく、それを阻止するために、ジェームス・ボンドが派遣される話である。

 今回の話が面白くないのは、冷戦の崩壊によってスパイ物が成り立たなくなってきた、世界情勢のせいばかりではない。
まず、登場人物の人間設定が雑である。
エレクトラが最初は犠牲者として登場しながら、実は悪人なのだというどんでん返しが効いていない。
それはまず彼女の演技の下手さによる。彼女は清楚さと悪役の演じ分けができていない。
それは脚本の人間の設定がまずいせいでもある。
それに国際的なテロリストとして、ロバート・カーライルが登場するが、彼は気のいい人柄がでてしまっている。
テロリストは悪役と決まっているのだから、見るからに悪人然としてほしい。
しかも大物の悪である。
この二人は、明らかにミスキャストである。

 ジェームス・ボンドが所属する機関のチーフであるMが、イスタンブールで容易く敵の捕虜になってしまう。
これも物語をおかしくしている。
彼女はロンドンにいてこそチーフなので、エレクトラからの「怖い」というたった一回の泣き言を聞いて、簡単にイスタンブールへ来てしまう。
「怖い」のを防ぐために、他の手段を講じるのがチーフの役目である。
チーフが動いたら、部下はどうやって命令を受ければいいのだ。
これでは組織は機能しない。

 男性スパイが格好良く活躍する映画は、もう限界に来ているようだ。
チーフのMこそ女性だが、ジェームスは女性にもてまくり、女性は客体である。
今回も女性科学者が登場するが、無敵のジェームス・ボンドが主人公である以上、女性は受け身にならざるを得ない。
当初、ゲイのはずだった女性科学者が、最後にはジェームスの相手になっている。
ジェームス・ボンドという人物設定がもう古い。
彼の人間的な魅力が伝わってこない。
つまり彼を格好良く感じられない。
オースティン・パワー:デラックス」からパロディとされるほうが、現実的なのだろう。

 パラシュート部隊、カッターつきのヘリコプター、何度もの爆発シーン、沢山のこわれものと、相変わらずお金をかけた映画だが、まったく面白味に欠ける。
今後も引き続き続編を作るらしいが、このままではあまり期待できない。

1999年のイギリス映画。 


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