タクミシネマ        守ってあげたい!

守ってあげたい!     錦織良成監督

 平凡な女の子が、日常に飽きていた。
ボーイ・フレンドに浮気されちゃったし、今後をどうしようかと思っているときに、たまたまかつての友だちが自衛隊員になっているのに出会う。
そこで何となく、彼女も自衛隊を受験し、自衛隊員になる。
オチコボレの女の子たちの自衛隊奮戦記である。
守ってあげたい! [DVD]
 
前宣伝のビラから

 映画の導入は非常に上手い。
不発弾の爆弾処理があって自衛隊を印象づけ、次に主人公安西サラサ(菅野美穂)がバイト先で自衛隊員と出会う。
ヤクザかと思っていると、実は自衛隊員たち。
それが昔の友だち。
何となく自衛隊を応募するのも、よくわかる。
そして、まわりの反応、入隊と、ここまでは完璧のできである。
リズムも良いし、自衛隊員を勧誘するおじさんの抜けたところも良い。
しかし、良かったのはここまで。

 普通の女性が自衛隊に入る、とても良い主題だと思う。
しかも、オチコボレの女の子たちの集団とすれば、これだけでもう充分にコメディになる。
国を守るという建前が立ちはだかる世界に、オチコボレの女の子が応募する。
厳しい訓練にスポコン的に適応し、無事巣立っていく。
ダメ隊員に鬼教官による愛のしごき、簡単な展開である。
それがどうして、こうなっちゃうのだろう。
演技の下手さもさることながら、演出のまずさだろう。
キャラクターの設定は良いとしても、間の取り方が違うのだと思う。
脚本にも問題ありか。

 コメディ仕立てと、真面目な映画は直接比較はできないかも知れないが、アメリカにはこの手の映画がたくさんある。
「愛と青春の旅立ち」「GIジェーン」など、同じように軍隊を舞台にしている。
こうした映画は、映画だと知っていても充分に見ることができる。
ちゃんと主人公に感情移入できる。
しかし、この映画では、主人公に感情移入しようにも、嘘臭くて白けていくばかりである。

 自衛隊が全面的に協力しており、戦車が走り回りヘリコプターが空を飛ぶ。
迫撃砲や照明弾まで打ち上げられて、自衛隊の力の入れ方はなみのものではない。
しかし、物語の中に、自衛隊の兵器が上手く絡んでない。
演習の途中で集中豪雨になるというのは良いと思うけれど、物語の進む滑らかさがない。
それぞれのエピソードは悪くないのだが、上手く繋がらないのだ。
台詞にしても、守ってあげたいが反対に守られちゃったという皮肉もあって、それなりに良いのだが、全体としてみるとダメなのである。

 脚本の展開には大いに問題がある。
演習からいきなり災害出動というのは、ちょっと無理で、そのあいだを繋ぐエピソードが欲しい。
また、鬼教官が自分の隊と離ればなれになってしまうのも、理解できない。
教官と隊員の能力には圧倒的な差があり、教官は余裕でついていけるはずである。
また、その後の教官の個人行動も理解できない。
センチメンタルなのは良いとしても、あまりに絵空事になってしまうと、白けるばかりである。 

 「守ってあげたい!」製作委員会なるものができ、小学館やら多くの組織がかんでいる。
協賛もたくさんあり、映画の中では多くのブランドがでていた。
お金を集めるには、そうした手段を講じるのもかまわないと思う。
しかし、そうした組織依存体質が、映画をつまらなくしているのだろうか。
それなりにお金がかかっているが、日本映画今だしである。

1999年の日本映画。


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