タクミシネマ        エントラップメント

エントラップメント     ジョン・アミエル監督

 ハリウッドのスパイアクション映画の典型である。
本当にお金がかかっており、脚本もよく練られている。
犯人は誰だか最後まで判らないし、そこそこに恋愛も入っており、2時間を楽しませてくれる。
でも、それだけの映画なのである。

 高額の保険のかかった美術品を盗み出しては、それを保険会社に買い取らせる凄腕の怪盗マック(ショーン・コネリー)がいる。
保険会社の調査員ジン(キャサリン・ゼダ=ジョーンズ)が、彼を捕らえるために活動を始めると思いきや、彼女も盗賊なのである。
まず手始めに2人で黄金の仮面を盗み出す。
これがなかなか手強い場所で、そのための訓練から始まってその実行まで、結構手に汗を握らせる。
そして、最後のヤマは、マレーシアの銀行である。

 コンピューターが2000年への切り替えのために、20秒間停止する。
その間を使ってプログラムを書き換えて、自分たちの口座に振り替えさせようとするのである。
そのために、マレーシアの世界最高の高さを誇るツイン・ビルに侵入する。
書き換えは上手くいくが、発見されて追われる身になる。
超高層ビルでの捕り物はもはや珍しくもないが、マレーシアのビルだというのが、ちょっと違った雰囲気である。

 マレーシアの風景が何度も出てくるが、古いアジア的な建物と超近代的なビルのコントラストがさりげなく描かれる。
これは皮肉なのか、単なる風景描写なのか判らないが、多分マハティールに対する皮肉だろう。
しかし、この映画を見て、マレーシアが力を付けていることが実感される。
わが国でもユリカモメが走っているが、マレーシアでも同じように無人の電車が実用に走っている。
こうした風景を見ると、マレーシアの発展は侮れないと思う。
マレーシアに限らず、21世紀はアジアの世紀だろう。

 キャサリン・ゼダ=ジョーンズの良く鍛えられた肉体美と、柔軟な体の動きは見物であるが、ショーン・コネリーはすでに歳がいっている。
ルル オン ザ ブリッジ」「6デイズ 7ナイツ」など、年の離れた男女が恋愛感情を持つ映画が多いが、やはり無理だ。
確かにショーン・コネリーは魅力的かも知れないが、相手が若すぎる。
年齢秩序という属性支配が崩壊しているのは判るが、肉体的な能力はやはり年齢に比例しており、こんなアクションスパイを演じるのは不自然だ。
ただ、最後のシーンで、反対側のホームへと走ってきたマックが息を切らしていたのは、お話の世界から急に現実に戻ったようだった。

 高齢者と若い女性という組み合わせだと、どうしても女性が未熟ながらガッツがある跳ねっ返り。
男性が余裕で指導者的立場ということになり、関係性が固定されてしまうように思う。
そのために、この映画では女性のほうを犯人にしているのだろうが、男女関係に関しては古いままだと思う。
FBIの捜査官に悪人面を配していたのは、ストーリー読みを見事に騙された。
1999年アメリカ映画。


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