タクミシネマ        クッキー・フォーチュン

クッキー・フォーチュン    ロバート・アルトマン監督

アメリカの田舎町に、老女クッキーが独りで住んでいる。
二人の姪と孫がいるが、姉のカミール(グレン・クルード)とはそりが合わない。
妹のコーラ(ジュリアン・ムーア)は姉のいうなり、孫のエマ(リブ・タイラー)は母親と衝突し、家出してしまった。
近所にいるウィリス(チャールズ・s・ダットン)が何かと面倒を見てくれる。
しかし、もうこの世には未練がない。
夫の待つあの世へと、ピストル自殺を遂げてしまった。
クッキー・フォーチュン [DVD]
 
前宣伝のビラから

 クッキーの遺体を発見したカミールは、自分の家系から自殺者を出すのは不名誉だと、強盗殺人へと演出してしまった。
そこで警察が捜査にのりだし、ウィリスを容疑者として逮捕する。
田舎の町のこと、警察といってものんびりしている。
警察署長は、ウィリスと大の釣り仲間だし、弁護士とも釣り仲間である。
誰もがウィリスの殺人を信じておらず、留置場の扉も開けたままである。
留置場のなかで、署長と弁護士それにウィリスは、クロスワードパズルをしているというのんびりさ。
家出娘のエマが街に戻っており、彼女はウィリスの無罪を信じて、一緒に留置場暮らしをする。

 話の終わりは、カミールの狂言がばれて、ウィリスは無事釈放され、また田舎町の平和な生活が始まる。
この映画は謎解きのサスペンスではないので、この顛末は最初から予測できるが、それはまったく問題ない。
この映画の見所は、ゆったりした田舎の生活と、普通の人たちの日常、日常生活に棹さした自分勝手な見栄への皮肉な結末である。
カミールの小利口な生き方への皮肉が効いており、グレン・クルーズが演じるカミールの留置場での演技は、その苦いおかしさが良く伝わってくる。

 街の教会で、復活祭のために「サロメ」が演じられる。
そのために街の人たちが、夜遅くまで稽古をしている。
カミールはその演出をしており、「サロメ」で演じられる台詞が、叔母の自殺を狂言強盗殺人に仕立てるカミールの台詞でもある。
自殺とは神から貰った命を縮めることであり、恥辱なのだと彼女は考える。
だから、身内から自殺者をだすことは許せない。
彼女は事実を曲げても、狂言強盗殺人にしてしまう。
もちろん、この狂言は認められるものではないが、彼女がそうするにもわけがある。

 カミールがコーラと住んでいたところへ、一人の男性が転がり込んできて、コーラと結婚した。
三人は一緒に住んでいたが、カミールともできてしまい、妊娠。
口さがない田舎の人たちを逃れ、カミールとコーラは都会へでて、子供を産む。
そしてコーラの子供として、田舎の町に戻ってくる。
それがエマである。
エマは母親コーラと合わず家出したが、この事件で自分の親がカミールであることを知る。
結婚制度と人間の行動のすれ違い、制度が人間を律し、人間に行動準則を与える。
人間を生かすはずの制度が、いつのまにか人間を縛っている。
しかし、制度に逆らうのもまた難しいことである。

 老女クッキー、人の良い黒人のウィリス、ナイトクラブの黒人たち、朴訥な警察官たちなど、市井の人々に温かい目を向けた映画である。
前半がのろく、なかなか物語が始まらず、ちょっとイライラするが、終わってみればあっけない2時間である。
映画全体の緊張感が低く、アルトマン監督もちょっと歳をとったようだ。

1999年のアメリカ映画。


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