タクミシネマ        サイモン・バーチ

サイモン バーチ   マーク・スティーヴン・ジョンソン監督

 1952年、メイン州のグレイブズ・タウンに、ひときわ体に小さな男の子サイモン・バーチ(イアン・マイケル・スミス)が生まれた。
両親は出来損ないとして無視したが、私生児のジョー(ジョゼフ・マッゼロ)は無二の親友として、彼を大切にし仲良く付き合っていた。

 おばあさんが一人で切り盛りするジョーの家は、大変なお金持ちだが、美人のお母さんレベッカ(アシュレイ・ジャッド)は列車で知り合った人の子を妊娠、出産する。
それがジョーである。
しかし、レベッカは相手が誰だか秘密にしている。
ジョーとサイモンは仲良く遊び、野球も楽しんでいたが、ある時、サイモンの打った球がレベッカを直撃し、それがもとでレベッカは死んでしまう。
二人の友情に亀裂が入ると思うが、何とかつき合いは続く。

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劇場パンフレットから

 教会主催の冬のキャンプに参加禁止となったサイモンは、野球カードを取り戻しに教会に侵入する。
そこで野球のボールを見つけ、ラッセル牧師(デヴッド・ストラサーン)がジョーの父親であることを発見する。
そしてそれを知らせに、キャンプ地へと向かう。
その頃、キャンプ地ではジョーにたいして、ラッセル牧師が自分が父親だと名のる。
ジョーは嫌みな牧師が自分の父親だと知って、ひどく落胆する。
キャンプの帰り道、バスが湖に落ちる。
冷たい水が進入する中、サイモンは子供たちを無事に助ける。
しかし、サイモンは死んでしまう。

 みんなから奇形、出来損ないとバカにされながら、神への信仰を失わず、明るく生きるサイモン。
体が小さく何の役にも立たないようでありながら、神は誰にも何か役に立つことを与えたと、信じるサイモン。
その姿勢にジョーの母親であるレベッカは、我が子のように愛情を注ぐ。
レベッカの新しいボーイ・フレンドのベン(オリバー・プラット)も、サイモンとジョーには何かと心を砕く。
サイモンが死んでからは、ジョーはベンの養子になって、映画は終わる。
ここでも血縁の親より、心の通うのが親であると言う。
今や家族は選べる時代なのだ。

 主題ははっきりしている。「ジャック」や「マイ フレンド メモリー」などと同様、心と体の分離が主題である。
もちろん、心こそ大切なのだというものであり、命を与えられた以上、誰にも何か役に立つことがあるのだという主張である。
この映画のように主題がはっきりしており、しかもその主題が真っ当である場合、主題それ自体を展開するのではなく。
むしろ主題をいかに見せるかである。
そうした眼で見ると、物語の展開がちょっと強引な感じがする。

 サイモンは親に無視されて育ちながら、屋根裏にはきちんとした子供部屋があり、日本の目からはずいぶんと整っているように見える。
それと、レベッカと相手、つまり血縁の父親が牧師であるのは良いとしても、いつも近くにいながら突然告白するのも変だ。
彼のところにボールがある理由も不明のまま。
この主題には賛同するが、全体に流れがやや不自然である。
そうは言っても、時代を切り開こうとするこの手の主題には、星一つをつけざるを得ない。
ジム・キャリーが端役で出ていたが、主題に共感したのだろう。
彼も時代と良く格闘している役者である。

 画面の周辺部を黒くつぶして、湖を見るシーンが何回かでてきたが、写真的な幻想さで美しかった。
W.E.スミスの写真を見ているようだった。
サイモン・バーチを演じたイアン・マイケル・スミスは、これが初めての映画出演だと言うが、それにしては演技が自然でだった。
演出のうまさが光る。
そして、ジョーを演じたジョゼフ・マッゼロがとても可愛かった。

1998年のアメリカ映画 


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