タクミシネマ        交渉人

交 渉 人       F.ゲイリー・グレイ監督

 濡れ衣を着せられた刑事ダニー(サミュエル・l・ジャクソン)が、自分の無実をはらす映画である。
それだけなら何と言うことはないが、彼はシカゴ警察きっての交渉人だった。
交渉人とは、現場で犯人と交渉し、人質などを救い出す刑事である。
その彼が今度は、反対に犯人役となって、警察と交渉する。
しかもその相手は、同じく交渉人のクリス・セイビアン(ケビン・スペイシー)である。

 事件は警察官の年金が横領され、警察内部の犯罪であることが判る。
かなりの上層部まで汚染されているらしい。
そのため、彼の所属するシカゴ東警察の人間ではなく、シカゴ西警察に属するクリスを交渉人に指名する。
三人の人質を取ったダニーは、手の内を良く知った自分の警察相手に、知恵と実力を交えて闘う。
ハリウッド映画らしく、最後はハッピーエンドに終わるのだが、ドンパチありの、愛情ありの、友情ありのと、なかなかに盛りだくさんである。

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ぴあ(7.5)から

 たしかに人質事件などの場合は、人質の安全を考えれば、迂闊な対応は出来ない。
そのために専門の刑事がいてもおかしくない。
人質との交渉で最も大切なコツとして、ノーと言ってはいけないと言うシーンがあったが、あれは面白かった。
ノーと言いたがる、英語の発想では、交渉人は大変だろう。
しかし、映画としては、純粋な娯楽作にとどまった。
設定はもちろん大切だが、その設定の中で主人公をどう動かし、何を語るかが問題だから、設定の面白さだけでは観客を打つことは出来ない。

 同じように警察官が主人公でありながら、「セヴン」が優れているのは、設定もさることながらその主題にあった。
そして、画面に一つのスタイルがあったことである。
また、「フェイス オフ」が面白かったのは、人間の姿に幻惑される主題だけではなく、緊迫したやりとりが良かったのだ。
どんな映画にも、一流の出来を期待するのは酷だが、この映画も相当にお金がかかっており、単なる娯楽作品で終わらせるのはもったいない。
人質だった人の良さそうな刑事が、実は事件の黒幕だったというどんでん返しはあるものの、もっと緊迫感があっても良い。

 警察内部の汚職刑事たちが、ダニーを殺して秘密を守ろうと突撃するシーンが、単純に繰り返されるだけだし、最後は悪者の何人かがつかまって終わる。
しかも、犯人には手を貸さないと言っていたクリスが、ダニーの無罪をはらすために逃走に手を貸してしまう。
これはあり得ないことだろう。

 ダニーは自分の相棒が、事件の片棒を担いでいたことを知って愕然とするが、それが全体へ波及してこない。
もっと人間関係を錯綜させ、一つの出来事が次の出来事を呼び込むように展開させて欲しい。
でも、二時間を楽しむだけなら、充分に楽しめはする。

1998年のアメリカ映画


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