タクミシネマ        ムーンライト・ドライブ

ムーンライト ドライブ     デヴィッド・ドブキン監督

 モンタナの田舎での話。
クレイ(ホアキン・フェニックス)は友だちの奥さんアマンダ(ジョージナ・ケイツ)と浮気をしたら、アマンダが旦那に喋ってしまい、頭に来た旦那が自殺する。
その自殺を、浮気したクレイが殺したように、友だちは仕組んだ。
アマンダに相談すると、けんもほろろで私は無関係、肉体関係も否定すると開き直った。
クレイは仕方なく、事故に見せかけて、友だちの死体を処理する。
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劇場パンフレットから

 しかし、旦那の自殺から一週間もしないうちに、アマンダはクレイに言い寄って、肉体関係の復活を迫る。
アマンダの態度に嫌気がさして、クレイは彼女を避けるが、彼女はしつこく追ってくる。
クレイが他の女性とベッドにいるところへ、アマンダが乗り込み、その女性を射殺してしまう。
死体処理をした弱みのあるクレイは、ふたたび女性の死体を湖へ捨てに行く。

 そんなとき、レスター(ヴィンス・ヴォーン)と名のる男と知り合いになり、湖に釣りに行くと、女性の死体を発見する。
実はこの男は、女性連続殺人犯だったのである。
レスターはアマンダまで殺し、クレイに殺人容疑がかかる。
FBIが家宅捜査すると、クレイの家から殺人に使われた包丁が出てきて、クレイはレスターにはめられたことを知る。
留置場にいるクレイの前に現れたレスターは、クレイの無実をはらすために、クレイが留置場にいる間に、もう一人殺すという。
クレイは脱獄し、それを阻止する。

 最後は、彼の無実を信じていたムーニー保安官(スコット・ウィルソン)によって、レスターが逮捕されて終わる。
クレイが殺人事件に引きずり込まれるまでは、上手く展開させている。
レスターが登場してから先は偶然が多くなり、話の興味がやや散漫になる。
クレイが殺人犯と疑われながら、すぐ次の女性と仲良くなり、ベッドまで行ってしまうのも不自然だし、レスターの登場も不自然である。
最後には、レスターが少女を殺そうとしている場所に、クレイが辿り着くのも偶然だし、FBIの捜査官もそこへ来るのは、偶然の天使が導いたとしか言いようがない。
セックスの最中に、上になっている女性を殺されたら、男性はもっと動転するだろう。
ウォーター・ベッドがチャポンチャポン音がしているのもへんだ。

 クレイをホアキン・フェニックスが演じているが、影のある暗い性格をだしており、それはそれで良いのだが、クレイのような性格であんなに女性にもてるだろうか。
ホアキン・フェニックスは三口の手術跡をもっており、俳優としてはとても不利な顔だが、いろいろな役をこなしている。
誘う女」でも演技はうまかった。
俳優も顔だけではない。
実生活では彼はもてるかも知れない。

 田舎の小さな街で、こうした殺人事件が起きると、もう少しパニックのようになると思うが、映画は事件当事者だけを追っている。
サスペンスだから当然と言えば当然だが、それにしては偶然が多すぎる。
ラブストーリーなら偶然も許されるが、サスペンス映画では本当か? 
こんな事はないだろう、と思わせたらもうダメである。
サスペンスは、緻密に事件を積み上げなければならず、観客の興味をぐいぐいと引きずるようでなければ成功とは言えない。

 田舎の保安官が、最後までクレイを信じており、それが小さな田舎町の救いのような感じがしてほっとさせられた。
ただ、レスターの逮捕をfbiの捜査官に委ねず、この保安官にさせたのは、ちょっと義理人情路線に過ぎる。
原題は、「Clay Pigeons」で、騙されやすいカモという意味だそうで、それを知るとこの映画の展開や主題がよく判る。

1998年のアメリカ映画


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