タクミシネマ              リトルシティ 恋人たちの選択

 リトルシティ 恋人たちの選択  
 ロベルト・ベナビブ監督

 舞台はサン・フランシスコで、ボン・ジョビが俳優をやっているが、歌と違って何だか田舎の芋兄ちゃんみたいである。
ボン・ジョビが扮するバーテンダー・ケビンは、親友アダム(ジョシュ・チャールズ)の彼女ニーナ(アナベラ・シオラ)を寝取ってしまう。
ケビンとニーナのセックスは相性が抜群で、彼女は誠意はあるがセックスはあわない男友達との間で悩む。
それをアダムが感ずいて、二人は分かれる。
しかし、実はアダムのほうも、前の恋人ケイト(ジョアンナ・ゴーイング)が忘れられなかった。

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劇場パンフレットから

 ここで全員が一度バラバラになるが、ケビンはニーナへの愛に目覚め、彼女に振られてもしつこく食い下がっていく。
アダムのほうも新しい恋人レベッカ(ベネローブ・アン・ミラー)が出来るかに見えるが、本当はケイトとの間を何とかしたい。
一度はケイトと間が復活しそうになるが、結局は破綻する。
ケイトとレベッカは、ともにゲイの女性アン(ジョベス・ウィリアムス)の相手を務めたことがあり、いくらかゲイの傾向がある。

 ここでニーナが妊娠したという。
するとケビンとアダムが、ともに父親をやりたいと主張する。
ニーナはケビンを選んで、結婚するという。
アダムはケイトにも振られて、映画は終わるかに見えるが、レベッカとの関係が復活しそうな雰囲気へとつながっていく。

 いくつになっても決断が出来ない大人たちの、愛情に飢えた生活風景を描いている。
主題は、都市生活者たちの揺れ動く心理だが、主人公がアダムなのかケビンなのか判らないところが、この映画を平凡なものにしている。
山らしい山がなく、いつの間にか話が進んでしまうのが、映画の面白さを作れないのだろう。
マクマレン兄弟」など、こうした主題での映画はたくさんあり、そうした秀作に比べると、退屈の感を免れない。

 最近の恋愛映画は、本当に高齢者化してきた。
この映画でも、妊娠したニーナは30歳という設定だが、演じたアナベラ・シオラは1964年生まれの35歳だし、ボン・ジョビだって1962年生まれの34歳である。
こうした高齢者が恋愛をするのは、現状がそうなのだろうが、何となく不自然な感じがある。
繁殖に適した年齢の時に恋愛するという、生物の基本原則から逸脱してしまったことは否めない。
もちろん、人間が自然から離れることが近代なのだから、生物の秩序から逸脱するのは仕方ないことだが、これがどこまで行くのだろうか。

 こうした現象が極限まで行けば、恋愛から肉体関係が分離するのは目に見えている。
肉体関係は肉体関係、精神的な恋愛は恋愛となるだろう。
その時人間たちは、どんな反応をするのだろうか。
この映画のタイトルである「リトル・シティ」とあるように、人間はそんなに広い交友関係を持っているわけではなく、日常は案外に狭い範囲で生活している。
そのために、男女がくっついたり離れたりすれば、かつての友人の恋人だったりすることは幾らでもある。
そうしたなかで、複雑に入り組んだ人間関係が出来ることは、多くの問題を生んでいくことだろう。 

1997年のアメリカ映画


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