タクミシネマ          エスケープ フロム L.A.

エスケープ フロム L.A.
 ジョン・カーペンター監督

 1998年のロス・アンジェルスは、悪の巣窟だった。
そこで大統領が、2000年までに大地震がきて、LAは崩壊すると予言した。
そのとおりに大地震がきて、LA大陸から分断されて島になった。
以降、LAは本土から送られてくる犯罪者の収容島となった。
その予言をした大統領は終身大統領になって、彼の治世が繁栄するようになる。

 ここまでの説明では、LAはあたかも大きな刑務所を連想させるが、実際は無法地帯と化しており、むしろ自由を求める者で溢れていた。
男も女も、欲望のままに、弱肉強食の世界だった。
乞食のような生活があると思えば、肉感的な女性が男を挑発する世界もある。
そこは刑務所どころか、自治区だったのである。

 実はアメリカ本土では管理化が進み、酒、タバコ、麻薬、女、食肉、政府批判などすべてが禁止されていた。
自由はまったくなく、少しでも政府に批判的な発言をしたものは、ただちにLAに送り込まれる。
管理社会に反発する大統領の娘ユートピアが、大統領のブラック ボックスを奪って、LAに亡命する。
そのブラック ボックスは、中性子爆弾を備えた人工衛星の発射スイッチで、地球上のどこでも人は殺さずにエネルギーを破壊できる。

 そのブラックボックスの奪回をめざして、スネークなる犯罪者が起用される。
すべての犯罪の特赦だけでなく、彼の体には10時間後に発病する細菌が入れられる。
政府が管理する解毒剤を使わないと、10時間後には確実に死ぬと脅かされたスネークは、ブラックボックスを奪還にいく。
この細菌は実はペテンだと最後に判る。

 LAには、クエボなる人物がラテン アメリカとつながって、アメリカ本土侵攻を画策していた。
そのクエボの手にブラック ボックスはある。
ちょうどその時、アメリカに対してラテン アメリカが軍事侵攻を始めようとしていた。
キューバがフロリダに、コロンビアがアメリカ国境に到達するのは時間の問題だった。
時は2024年、すでに力の衰えたアメリカはそれを阻止できない。
頼みは、ブラック ボックスを使っての攻撃だけだった。

 ユートピアはクエボとつながって、本土の解放を願うが、自由を求める人々も実は、単なる人殺しだと知る。
もちろん最後は、無事にスネークがブラックボックスを奪えかえし、アメリカ本土に戻ってくる。
本土の管理社会も第三世界の自由もともに、人間には利してないと、スネークは地球上のすべてのエネルギーを破壊すべく、ブラックボックスのスイッチを押す。
地球上から電気が消え、太古へと後戻りする。いわば文明批判の映画である。
映画の終わりの台詞が「Welcome to human being」であるのはかっこ良かった。

 アメリカ本土の管理社会は、リアルに描かれているが、自由の世界であるLAはまったく荒唐無稽である。
これはアメリカにあるマッチョ漫画などと同じタッチで、「フロム ダスク ティル ドーン」の後半と同じセンスである。
おそらく、これを好きなマニアがいるのだろうが、こんなマイナーな映画にとてつもないお金をかけている。
好きな人にはたまらない映画かも知れないが、この映画の古い感覚にはついていけなかった。
1995年アメリカ映画。


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