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有名な役者が大勢でて、カメラワークも良い、となれば面白い映画になるだろうと思う。 が、何を訴えているのかよく判らなかった。 ルイジアナ州知事の汚職をめぐる話で、実話に基づいているらしい。 アメリカにも田中角栄のような男がいたのだ。
終戦直後のアメリカは貧富の差が激しく、富裕層は利権を独占し、貧乏人はますます貧乏になっていた。 州知事の選挙が行われても、出馬するのは富裕層からばかり、今回も富裕層の間の戦いだった。 劣性になった候補者が、出納係だったウィリー(ショーン・ペン)を担ぎ出したが、それは対立候補の票を減らすための当て馬だった。 かつて、校舎建設入札の不正を糺した彼は、街角に立ち人々に汚職について訴えた。 しかし、大衆の理解は得られず、職を辞す羽目になっていた。 当て馬だった彼だが、俄然やる気を出し、とうとう当選してしまう。 そんなとき、クロニクル紙の記者ジャック(ジュード・ロウ)は、選挙運動の取材をするなかで、ウィリーの味方になっていく。 そして、新聞社の方針と対立し、記者を辞めてしまう。 当選後、ジャックはウィリーの参謀になって働く。 しかし、貧乏人だったウィリーと、富裕階級出身のジャックとでは、しょせん生き方が違う。 大衆の登場と、産業構造の変換という時代の狭間で、階級間対立の軋轢から、さまざまな問題が起きる。 ジャックの叔父である判事(アンソニー・ホプキンス)は、反ウィリーを鮮明にする。 敵方に回った判事を、なんとかして味方に付けなければならない。 ジャックは叔父の過去を暴く仕事を命じられる。 スキャンダルを明かされた叔父は自殺するが、じつは彼はジャックの実の父親だった。 女癖の悪いウィリーが、 ジャックの初恋の女性アン・スタントン(ケイト・ウインスレット)に手を出したことから、 ジャックはウィリーとの距離を感じ始めていた。 そのときに、ウィリーによって病院長に抜擢されたアンの兄アダムが、 被害妄想からウィリーを射殺する。 富裕階級出身で正義感の強いアダムは、アンのヒモだと言われるのに、耐えられなかったのだ。 アンの父親は、かつては州知事だった。 金持ちたちの優雅な生活が、色濃く残る屋敷も、いまでは電気さえ止められてしまった。 彼等は貧乏な生活に耐えている。 アンは自分の身体で、成金の州知事から金を引き出したのだ。 何が悪で、何が善だか解らない。 ウィリーは大衆の支持を集めて、一躍ヒーローとなった。 道路も造ったし、学校もつくった。 貧乏人に利益を還元した。 しかし同時に、いつの間にか、彼も利権にまみれていった。 その過程は、田中角栄のたどった道と、まったく同じである。 貧乏人がのし上がるのには、正義の王道を通るだけではすまない。 度量の大きさは、色好みとなって表現されたのだろうし、当時は「英雄、色を好む」で許されたのだろう。 この映画は何を訴えたかったのだろう。 まさか貧乏あがりの男の政治能力を、批判しているのではないだろう。 セットにもお金をかけている。 撮影はうまい光の使い方で、渋い色をだしている。 しかし、ただ歴史的な事実を並べただけのように見える。 一時は、大統領候補とも言われたウィリー。 貧乏人が出世するには、ウィリーのような仕儀になるのは仕方ない。 やり手であればあるほど、保守派と衝突する。 彼の女癖が悪いのも、裏から見れば彼の魅力なのだ。 だから、女性は彼になびく。 ジャックにはない魅力を、ウィリーは持っていた。 だから、アンは彼の情婦になった。 有名俳優がたくさん出ているが、俳優たちの演技がバラバラだったように感じる。 ショーン・ペンの演技は、絶叫するタイプではないように思うが、演技は単調になっていた。 ジュード・ロウは性格付けが掴めていないままで、演技をしていたように感じる。 そのなかで、アンソニー・ホプキンスはマイペースといった感じで、 監督の演出が届いていないように見えた。 主題がはっきりしていないのが、結局、まとまりの悪さに繋がっていったのだろう。 2006年のアメリカ映画 (2007.4.19) |
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