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あまりに不愉快な感覚が残り、この晩は魘されそうだった。 医療機器のセールスマンが、頑張って億万長者になる話で、 スーパー頑張れば金持ちになれるという、体制側の宣伝映画である。 この映画が、実話に基づいているだけに、不愉快な感覚が残る。
クリス(ウィル・スミス)は、医療器械が売れない。奥さんにも逃げられて、貧乏のどん底。 家賃は払えない。 駐車違反の反則金が払えずに、留置場にやっかいになる始末。 彼の生きがいは、息子のクリストファー(ジェイデン・クリストファー・サイア・スミス)だった。 証券会社への再就職を決意するが、正式採用まで6か月間の無給の研修が待っていた。 しかも、研修が終わっても、採用される保証はない。 その苦闘の日々を描いた映画だが、失業者の群れが街に溢れるなかで、 採用された彼は裕福になっていく。 頑張れば裕福になれるという、ほとんど不可能な厳しいメッセージを、観客に伝える映画である。 あたかも失業者は、本人の努力が足りないと言っているようだ。 たまたま彼は、数学的な才能があったし、本人の努力もあったが、幸運も味方した。 にもかかわらず、努力せよ、さすれば報われる、という映画で、 こんな主題が今頃蒸し返されるのは信じられない。 もちろん成功のためには、努力が必要だろう。 しかし、この映画の主人公のような努力を、万人に要求するのは異常である。 この映画で見ても、確かにアメリカの社会は、我が国に比べると開かれている。 クリスが電話をいれると、10分か15分だけだが、紹介状もなしに会ってくれるvipがいる。 それは大学の教授たちが、知らない学生からの質問にも、気が向けば答えるのと同様だろう。 我が国の教授たちは、メール・アドレスを公開していないが、 非公開のメール・アドレスとは何のためのインターネットだと思えてくる。 しかし、彼の頑張りは、やはり異常である。 普通の努力で、健全な生活ができる社会をつくらなければならない。 ほとんど不可能な成功話を、誰にでも可能なように描くのは、無責任の極みだし、 とても真っ当な表現者だとは思えない。 原題は「The pursuit of happyness」 2006年アメリカ映画 (2007.2.14) |
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