タクミシネマ               ソルト

ソルト   フィリップ・ノイス監督

 北朝鮮の収容所で、イヴリン・ソルト(アンジェリーナ・ジョリー)が拷問を受けているシーンから、映画は始まる。
やがて彼女は、捕虜交換によって釈放される。
CIAの上司であるウィンター(リーヴ・シュレイバー)が、そこへ迎えにでる。
Angelina Jolie at event of Salt
IMDBから

 彼女の夫が救出に熱心だったから、彼女は捕虜交換の対象にしたのだという。
夫はクモを研究している。
学者という設定だが、彼女にぞっこん惚れている。
しかし、クモの研究者というだけで、クモの毒が使われるなと予測できてしまう。
案の定、ロシア大統領の暗殺に、クモの毒がつかわれる。

 CIAのエージェントであるソルトは、ソ連で育ち、スパイの英才教育を受けてきた。
そして、CIAに送り込まれる。
しかし、ソ連が崩壊し、彼女はアメリカへと忠誠心を変更する。
そのまま素性を隠して、勤務を続けていた。

 ロシアからやってきた密告者オルロフ(ダニエル・オルブリフスキ)が、CIAの取り調べに、ロシア大統領暗殺のためソルトが送り込まれているという。
それを聞いたCIAは、ソルトに確認しようとするが、彼女はいち早く逃げ出す。
そこで彼女はロシアのスパイに断定される。
CIAとFBIから、追われる身になる。

 ソ連でスパイ教育を受けた彼女が、どこで変心したのかが判りにくい。
オルロフによって、目の前で夫を殺されるが、あれが切っ掛けだったのだろうか。
それにしては、まったく動揺も見せなかったので、ちょっと無理があるように感じる。
信じていたものを変えるには、心理的な屈折があるはずで、ソ連からアメリカへでは大変な変心である。

 ロシア大統領の暗殺に成功しながら、大統領が生き返るのは良いとしても、ちょっと無理がすぎる。
CIAの上司であるウィンターまでが、ソ連のスパイだったとなっては、一体どうなっているんだと思う。
ソルトだけではなく、アメリカ大統領にも接するCIAの幹部が、ソ連のスパイだった! 

 CIAの身辺調査が、こんなに好い加減では、アメリカはすでに崩壊しているだろう。
いくら何でも、大統領の警護にあたるのであれば、「バンテージ・ポイント」が見せたように、素性の確認は入念に行われているはずである。
ソルトは主人公だから良いとしても、ウィンターまでロシアのスパイという設定はいただけない。

 アンジェリーナ・ジョリーのワンウーマン映画である。
他に有名俳優はでていないし、ただ彼女のアクションが延々と続く。
Mr.& Mrs.スミス」といい、彼女はアクション俳優としての地位を完全に確立した。
彼女のように細身の女性が、あれだけのアクションするのは、非現実的だとは思う。
しかし、映画だから許されるだろう。

 アクションも多くの女優さんがやっている。
アクション女優をかっこいいと感じる時代でもある。
いまや男性に負けずに、女優さんも身体を張る時代である。
可憐な優しさを売り物にする女性像は、もはやアメリカ映画には存在しない。
男性と同様か、男性以上に強い女性ばかりである。

 我が国では専業主婦を温存し、女性像を古いままにおいてきた。
そのため、いまだに可愛い子が人気がある。
しかし、先進国の女性たちは、もう実力を売り物にしている。
アンジェリーナ・ジョリーの人気を見るたびに、彼我の差は大きく開いてしまったと思う。
「SALT」
 2010年アメリカ映画 
(2010.08.06)


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