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ガールフレンド・エクスペリエンス
スティーブン・ソダーバーグ監督

 売春婦もピンキリである。
立ちんぼとか、チョンノマといわれる売春婦は、安く男性の相手をする。
しかし、高級売春婦になると、誰かの紹介がないと相手にしない。
そして、その値段もとびきり高い。
Still of Sasha Grey in The Girlfriend Experience
IMDBから

 昔のパリでの話。
立ちんぼの値段は200フラン位だったが、室内にいる売春婦は同じことをして1000フランだといった。
たしかに室内の売春婦は美人だった。
高級売春婦ならと考えると、値段はちょっと想像がつかない。
この映画の主人公チェルシー(サーシャ・グレイ)も、高級売春婦である。
1時間2000ドルというから、値段だけであれば、とびきりの高級だろう。

 彼女は組織に属さずに、1人で商売をしていた。
これは危険なことだが、すでに何年か商売をつづけているのだろう。
彼女は、恋人のクリス(クリス・サントス)と、高級アパートで同棲している。
クリスは彼女の仕事を認めており、かろうじて共同生活がなりたっている。

 この映画は、チェルシーが雑誌記者のインタビューに答えるというかたちで、彼女の生き方が描かれていく。
客と恋人の位置。
私生活と客の要求などなど、さまざまな質問がとぶ。
彼女は答えたくない質問にはパスするが、映像がそれを補う。
主人公は実際にも、ポルノ女優だというので、それなりに近い生活なのかも知れない。

 彼女は衣装にもお金を使い、最先端のファッションを身につけている。
そして、知的な情報にも目を配り、自分を磨くための自己投資を怠らない。
その彼女のウリは、本物の恋人と過ごすような売春婦というものだ。
組織に属さない彼女は、ネットでのSEOにも気を配っており、SEOのために週に1500ドル使おうとする。

 スポーツジムでパーソナル・トレーナーをしているクリスは、彼女が客と週末旅行にでるというと、機嫌が悪くなる。
また、クリスが男性だけでラスヴェガス旅行に行こうとすると、今度は彼女の機嫌が悪くなる。
このあたりは彼女の職業からくるのか、ちょっと判断が付かない。


 かつてはフリーの売春婦には、ヒモがついていた。
しかし、女性の自立は、売春婦をも自立させた。
この映画を見ていると、彼女の客は次の予約をしていく。
メールや電話もできるし、悩み事も打ち明けているから、ほんとうのガールフレンドのようだ。
違いがあるとすれば、彼女のほうが客に心を開かないことだ。

 相性のいい客に巡り会って、彼女は心を開こうとする。
しかし、今度は相手のほうが、会うことを拒否してくる。
小さな子供のことを考えたら、彼女と親密な関係になれなくなったというのだ。
売春婦とガールフレンドの違いがなくなっているようだが、やはりお金でつくる関係は、愛情を維持できない。

 愛情とは精神活動の産物だが、お金やセックスに影響を受ける。
この映画では、セックスにあまり大きなウェイトをかけていない。
人間関係は継続である。
それを考えると、売春婦とガールフレンドとは、明らかにちがうのだと知る。

「THE GIRLFRIEND EXPERIENCE」
 2009年アメリカ映画 
(2010.07.14)


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