タクミシネマ                  鉄男 THE BULLET MAN

鉄男 THE BULLET MAN    塚本晋也監督

 日本の映画だが、1人を除いて、なぜか全編英語である。
海外での公開を予定しているのだろう。
「鉄男」のリメイクと言うが、話自体は第3話と見たほうが良いらしい。


公式サイトから
 アンソニー(エリック・ボシック)は、妻ゆり子(桃生亜希子)と3歳の息子トムと、東京で暮らしている。
ある日、突然にトムが車にひき殺される。
激怒するゆり子に促されて、トム殺しの犯人を追い始める。

 バイオテクノロジーの優秀な科学者だったアンソニーの父ライド(ステファン・サラザン)が、妻の美津枝(中村優子)とともに、アンソニーを創ったことが判明する。
彼は怒ると、鉄に変身して全身が武器になる身体だった。
ライドは鉄の身体を、企業の協力を得て創っていたのだ。


 不思議なことに、ライドと美津枝は愛しあっており、ふつうにセックスをしている様子だ。
にもかかわらず、人間の父親と母親のセックスから、なぜか鉄人間ができてしまった。
これは問わないことにしよう。
とにかく怒ると鉄人間=弾丸男になってしまうのだ。

 トムを殺した男(塚本晋也)と、秘密を守ろうとする企業からの暗殺者とから、アンソニーは追われる。
もちろん全身が武器の男だから、彼は勝つのだ。
それだけの話だが、その過程が独特の映像で、轟音と共に展開していく。

 この映画は、本人がリメイクしている。
最初の作品は、モノクロだったのだろうか。
この映画もセピア調あり、モノクロあり、カラーありと、なかなかに凝ったつくりだ。
しかし、話の展開は、きわめて日本的なウエットさで、いささか辟易する。

 アンソニーとライドは、外国人が演じているので英語は滑らかだが、日本人が喋る英語には問題がある。
たしかに英語ではあるのだが、どう聞いても日本語なのだ。
発音は言うに及ばず、日本語を横文字に置きかえただけ。
日本語を英語で聞いているようで、台詞自体がとても不自然である。
あんな英語はない。
英語の台詞にするなら、最初から英語の脚本を書くべきだ。

 この映画の原作は、好評だったらしい。
この映画で、塚本晋也監督は評価を確立し、それなりの世界では有名人である。


たしかに劇画チックな画面と、暴力的な轟音とが、当時は新鮮だったかも知れない。
原作の時代には、パソコンもメールも使われてなかっただろう。
そのため、今風にリメイクしたのだと思う。

 前衛映画と言ってしまえば、それまでである。
主題などを云々するのではなく、劇画と轟音を楽しむものかも知れない。
しかし、原作が古いせいか、ライドと美津枝の関係など、全編を強烈な男尊女卑的な空気が流れている。
研究者は男性で女性は補助者とか、復讐するのは男性で、女性は添え物に過ぎない。

 主題を云々しないまでも、映画の背景を支える状況は現代的であって欲しい。
主題を論じないとすると、本サイトが評価する基準には乗ってこない。
劇画映画「カムイ」を思いだした。
 「鉄男 THE BULLET MAN」
 2009年日本映画 
(2010.05.24)


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