タクミシネマ     パブリック・エネミーズ

パブリック・エネミーズ
マイケル・マン監督

 1933年の話。
大胆不敵な銀行強盗の話である。
ジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)は、仲間と共に白昼に銀行を襲い、お金を強奪していた。
捕まって収監されても、脱獄をくり返していた。

Still of Johnny Depp and Christian Bale in Public Enemies
IMDBから

 ある時、出会ったビリー・フレシェット(マリオン・コティヤール)に惚れ込んでしまう。
銀行強盗には恋は御法度だったが、彼はビリーにメロメロになっていく。
FBIはデリンジャーを社会の敵(Public Enemy No.1)として指名手配する。
これで結末は見えてしまった。
銀行強盗と堅気の女性との恋となれば、もう逮捕されるのは時間の問題である。
 
 かの名作「ボニー アンド クライド」のように、女性も銀行強盗に参加するのではなく、ビリーは待つだけの存在。
これでは映画として、物語が先細るのは見えている。
ビリーの待つ場所には、FBIが張り込んでいる。
権力側と一介の銀行強盗では、敵うはずがない。
徐々に追いつめられて、最後は射殺されてしまう。
なぜ、この映画が撮られたのだろう。


 話の先も見えているし、特別にドラマチックな展開もない。
平凡な銀行強盗である。映画化する必然性を感じなかった。
いくら義賊のように描いても、やはり銀行強盗である。
見得こそ切ってはいないが、決まったと思わせる仕草が、映画のできを救うわけではない。

 1930年代のスタイルは、男性は男性らしく、女性は女性らしかった。
いかにものファッションで、それはそれなりにカッコイイが、もはや今風ではない。
一種の様式美と化している。ユニセックスのファッションが主流の今日、こうしたスタイルで見せるのでは、映画の本流ではない。


 ジョニー・デップは演技がうまい。
微妙な表情を演じわけ、しかも自然な仕草である。
それにたいして、FBI捜査官メルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ベイル)は、ミスキャストだった。

 ジョニー・デップが熱い時代の俳優だとすれば、クリスチャン・ベイルはクールな時代の俳優である。
もっとサイキで、精神的な歪さを演じさせると上手いが、ガッツで演じる役は不似合いである。
原題は「Public Enemies」   2009年のアメリカ映画
(2009.12.25)


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