タクミシネマ      ココ・アヴァン・シャネル

ココ・アヴァン・シャネル
アンヌ・フォンテーヌ監督 

 シャネル・スーツをつくった女性の伝記映画である。
田舎で育った彼女が、パリに店を出すまでを描いたもので、2人のパトロンを抽出している。
フランス映画を悪し様に言いながら、またフランス映画を見てしまった。

Still of Alessandro Nivola and Audrey Tautou in Coco Before Chanel
IMDBから

 ガブリエル(オドレイ・トトゥ)のあだ名はココ。
彼女は、2人姉妹の妹だった。
父親に捨てられて、孤児院で育った。
成人してからは、田舎キャバレーの歌手をしたりするかたわら、お針子でもあった。
鼻っ柱の強い彼女は、キャバレーに遊びに来た貴族(ブノワ・ポールブールド)に気に入られる。

 貴族の屋敷に居候しながら、夜の勤めも果たす。
彼女の青春時代であり、自分が何者になるかわからず、悶々としていた。
そこへイギリス人男性(アレッサンドロ・ニボラ)が登場する。
彼はココを気に入って、愛人とする。
そして、彼はパリへ帽子店をだすパトロンになってくれる。

 映画は孤児院から、パリに出てくるまでを描いている。
まったくツテのない女性が、フランスの古い社会で出世するには、男が必要だった。
高田賢三もアラブ人男性の相手をして、お金やツテを確保したと言う。
女性であれば、さぞ大変だったろう。
才能のある人間が、才能を開花させるためには、身体を売ろうがまったく構わないのだ。

 才能の前では、道徳など蹴飛ばしても良い。
シャネルというスタイルを確立したことは、どんなに絶賛してもしすぎではない。
今後も、彼女の名前は永遠に残るだろう。
しかし、いかに彼女が優れた女性でも、映画のできは別である。
映画としてみるべきところはない。


 外国人の我々には、フランスの貴族の生活がおもしろい。
貴族とは働かない生き物で、毎日遊んで暮らしている。
そうでありながら、庶民からの尊敬を集め、裕福な生活をしている。
この映画では、すでに貴族制度が崩れた社会でありながら、そうした貴族の生活が描かれている。
新興ブルジョワジーが、なぜ貴族と結びついていくかなど、さりげなく描かれている。

 最近のフランス映画にしては珍しく、英語ではなくフランス語である。
先入観かも知れないが、フランス人俳優は英語が下手のように感じる。
フランス語を喋っているほうが、ノビノビしている感じがした。
ところで、フランス語で映画を撮ったのは、もう世界を相手にするのを止めて、フランス国内向けの映画を作ったのだろうか。

原題は「Coco avant Chanel」
2009年フランス映画

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