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中国革命に先立つ反清国の運動で、先頭に立っていた孫文のペナン滞在時代を描いた映画である。 革命運動とは過酷なものだ。 孫文は失敗につぐ失敗で、9回の失敗を続けていた。 仲間は捕らえられて、拷問の末に殺されたりしていた。
1910年、武装蜂起に失敗した孫文(ウィストン・チャオ)は、日本へ逃れる。 しかし、日本にもいられなくなり、英領マラヤ(現在のマレーシア)のペナンに逃れる。 そこで彼は愛人のチェン・ツィフェン(ウー・ユエ)と共に、優雅な暮らしを続けながら、革命資金の調達をはかる。 麻薬で儲けたシュー・ボウホン(ワン・ジェンチェン)も例外ではなかったが、娘のシュー・タンロン(アンジェリカ・リー)が孫文に心酔していく。 フィアンセのルオ・ジャオリン(チャオ・チャン)は、清国側の暗殺者だった。 しかし、徐々に孫文へ近づき、とうとう彼の右腕になっていく。 映画としては、中国映画の典型で、共産党の宣伝である。 孫文はこんなに偉大だった。 しかも、愛人とは相思相愛で、2人は純愛を育てていたという。 実際は、孫文は公私混同が激しく、愛人を次から次に代えていた。 英雄色を好むのは、体制側も反体制側もかわらない。 彼は、有力なアジテーターだった。 それが革命運動では、不可欠な才能だった。 当時のペナンの風景など、のどかな時代を垣間見させてくれる。 そして、豊かな華僑の生活など興味をそそられる。 しかし、愛人の生き方が、とても興味深い。 チェン・ツィフェンは奥さんと同様の役割を果たしながら、実際は<孫文の女>という扱いだったろう。 事実、革命後に彼女は身を引いている。 ましてや、革命運動は男そのものだった。 富裕層にお金をたかり、人殺しをやって、政権奪取をねらう。 たまたま革命に成功すれば、いちやく大統領や首相になるが、失敗すれば賊軍である。 しかし、賊軍になっても、孫文は優雅な生活をしていた。 革命運動の先頭に立つ人間が、肉体労働者の生活をすることはできない。 そんなことをしたら、彼のカリスマ性がなくなって、大衆はつぃてこない。 貧乏はしても、裕福そうな生活を演出しなければならない。 しかも、大衆に理解ある姿勢を見せなければらない。 孫文の性格付けは、まさに美しき革命家である。 そんな美しき革命家のそばに、いるだけで良いのが愛人である。 これも実際は江青のように、孫文の威を借りた女性だったかも知れないが、映画はあくまでも控えめで、芯の強い女性と描く。 共産党の幹部には、ハウス・キーパーと称して愛人がついていた。 それでいて、愛人だった女性の名前は、歴史には登場しない。 70年頃の学生運動でも、同じような傾向があったが、この頃には個人的な男女の関係になっていた。 しかし、学生運動でも、表にでるのは男性活動家であった。 そして、活動家の恋人になった女性たちは、<○○の女>といわれた。 決して男女が対等の関係で恋愛しているのではなかった。 政治運動のなかでは、女性の地位は低い。 我が国の場合、それに反発したところから、ウーマン・リブが誕生したといっても過言ではない。 全体主義の世界では、個人の表現は難しい。 こうした映画を撮っているかぎり、中国では映画表現が成立しないだろう。「Road to Dawn」 2009年中国映画 |
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