タクミシネマ       ラスヴェガスをぶっつぶせ

ラスヴェガスをぶっつぶせ
ロバート・ルケティック監督

 実話だというから驚く。
MITの大学生ベン(ジム・スタージェス)は、成績が全AとMITのなかでも、きわめて優秀な学生だった。
卒業後も、ハーバードの医学部に進学が決まっていた。

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 ハーバードは学費が高いのでも有名である。
年間500万円、6年間で3千万円が必要だが、そのお金がない。
アルバイトをしてはいるが、そんなものでは足りない。
学費に頭を悩ませているとき、ラス・ヴェガスでブラック・ジャックをやって、儲けるという話がきた。

 数学の教授ミッキー(ケビン・スペイシー)が主宰する、ブラック・ジャックを数学的確率でせめるグループが、プレーヤーを捜していたのだ。
メンバーはキアナ(ライザ・ラピラ)、チョイ(アーロン・ヨー)、ジル(ケイト・ボスワース)、フィッシャー(ジェイコブ・ピッツ)の4人だが、1人の欠員ができた。
彼に白羽の矢がたった。
ジルの色仕掛けで、いやがる彼を、グループに引きずり込んだ。

 こうなればもう展開はみえている。
最初は連戦連勝がつづくが、やがて仲間割れから、ベンの失墜とすべてを失う結末だろう。
案の定まずフィッシャーが脱落。
そして、ベンがアツくなって確率追求路線を逸脱し、ギャンブルにのめり込む。
そのため、ミッキーと対立。
稼いだお金はおろか、単位不足でMITは卒業できないは、当然にハーバードもパア、という結末。


 ちょっとオチがついている。
ラスヴェガスのカジノの用心棒コール(ローレンス・フィッシュバーン)が、ミッキーの仇敵だった。
コールはミッキーを引き渡せば、ベンを許すといって取引を迫る。
この取引に乗った彼は、ミッキーをひきわたしてハッピーエンドになる。
いったいどこまでが実話だか、見当がつかないが、ベンのような学生がいたことは事実なのだろう。

 話は面白いが、映画としてみると、それほど高い評価はできない。
まず、結果が見えており驚きがない。
ボストンの学生街と、ラスヴェガスの落差も、あまり感じない。
貧乏学生だったベンから、大金を手にして変化していく様も、もう少し落差激しく描いてほしかった。
それと何より、テンポが遅い。

 カジノでのシーンは、リズミカルに気持ちいい音楽にのって、軽快に見せるべきである。
そして、ボストンでの学生生活は、陰鬱に描くべきだ。
ぜんたいに進み方がのろく、先が読めてしまい驚きがすくなかった。
また、ミッキーを演じたケヴィン・スペイシーの演技が、平板でいささか食傷気味である。
「ユージュアル・サスペクツ」以来、彼の演技には進歩がない。

 ジルが誘いに来るから、当然にミッキーの差し金だろうと思う。
ベンがジルにキスをせまると、彼女はそれを拒否する。
これでジルは、ミッキーと愛人関係にあるのかとおもったが、どうもそうではないらしい。
すべてを失ったベンが、ジルにすがるシーンがあるが、いささか甘い結末である。

 ベンを除いた4人のメンバーのうち、女性と男性の2人にアジア系がキャスティングされていたが、この2人はまったくのおまけだった。
2人のアジア人は物語の主流からは、まったく外されていた。
黒人が台頭して、権利主張するようになったので、おとなしくて賢いアジア人を使っているのだろうか。
白人映画だろう。


 ちょっと不思議だったのは、ラスヴェガスにはたくさんのカジノがあるのに、なぜいつも同じカジノにしか行かなかったのだろう。
違うカジノに行けば、顔を知られていないので、安全な稼ぎができただろうに。
それともう一つ。
この映画で描いていたカウントという技術は、違法ではないはずなのに、なぜ用心棒から逃げなければならなかったのだろうか。原題は「21」
 2008年アメリカ映画   (2008.06.05)

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