|
||||||
|
||||||
インディ・ジョーンズ・シリーズは、前3作で終了予定だったらしい。 大好評で大いに儲かったので、番外編が作られたのだろう。 今回は、考古学者インディアナ・ジョーンズ(ハリソン・フォード)が、宇宙人の頭蓋骨をめぐって、南米にわたってロシア兵と戦う。
話は1957年から始まる。 ソ連の台頭があり冷戦が始まった頃、スパルコ司令官(ケイト・ブランシェット)はネバダのアメリカ軍の保管庫に進入し、クリスタル・スカルを奪おうとする。 その手伝いとして、インディアナが連れてこられる。 何と、そこで原爆が爆発してしまう。 原爆には大いに問題があるので、別に後述する。 クリスタル・スカルを本来の場所に戻した者は、とてつもない力を手に入れることが出来るとあって、彼らは南米へと向かう。 いかにもアメリカ人好みの冒険物語で、ナスカ、ペルー、メキシコなどなど、アメリカの裏庭を彼らは縦横無尽に歩き回る。 シリーズに付き合ってきた人には分かるだろうが、南米で元恋人と再会し、アメリカから一緒に来た若者は、彼の息子だとわかるという顛末。 ちょっと付いていけないご都合主義。 もちろん最後は、何と彼が結婚までしてハッピーエンドに終わる。 CGの技術はどんどん進歩するが、優れたCGで表現するお話は、想像力でふくらませるしかなく、突飛もない話はなかなか想像できないものだ。 宇宙と宇宙のあいだから来た生物という設定らしいが、その姿も通常の宇宙人と同じである。 インカの遺跡にしても、想像力が突き抜けているわけではなく、新しい映像シーンを作るのはほんとうに難しいのだ。 ただ、ジョージ・ルーカス・プロダクションともあろうに、この映画に関しては、前に立つ人物や物が背景にうまく馴染んでおらず、CGの不自然さが何カ所か目立った。 物語に関しては特別に言うことはない。 しかし、原爆の扱いが、無知としか言いようがなかった。 映画では人間が空を飛んでも良いし、透明人間になっても良い。 それらはあり得ないと、観客たちが無前提の前提にして、お話を楽しんでいるのだから、大いに結構なことだ。 原爆が爆発する寸前、爆発をさけるために、彼は冷蔵庫に閉じこもる。 冷蔵庫は鉛に遮蔽されているからということで、彼は爆心から吹き飛ばされながら、全くの無傷で助かる。 こんなことはあり得ないが、これは良いとしよう。 その後、彼は水シャワーで身体を洗われて、放射能を落としたことにされる。 これはないだろう。 爆心にいたら当然に被爆しているはずで、こんな状態ではない。 それを水で洗っただけで、全くの異常なしというのもあり得ない。 映画であろうとも、なぜこれがダメかと言えば、映画製作者たちは被爆したあとの放射能について知っている。 原爆のキノコ雲でリアリティを使いながら、被爆の処理にはリアリティを無視している。 原爆で吹き飛ばされて、月まで行っちゃったというのなら良い。 しかし、被爆したら放射能のせいで、悲劇的なことになると知っていながら、その程度を薄めてみせることはやってはいけない。 荒唐無稽はやってもいいが、話の辻褄をあわせるための、こじつけはやってはいけないのだ。 しかも、被爆するエピソードは、主な物語とは関係ない。 と同時に、被爆してもこの程度の処理で大丈夫だ、という特異な政治的な発言となっている。 弾丸を跳ね返しても良いし、スーパーマンが原爆を封じ込めても良い。 しかし、リアリティの程度を使い分ける中途半端な辻褄合わせは、映画だからこそやってはいけないのだ。 冒険映画やSF映画は、どこかで無理がでてくる。 それを批判しているのではない。 空を飛べたスーパーマンが飛べなくなるには、飛べなくなった理由が必要である。 その映画が前提とするリアリティの使い分けを批判しているのだ。 スティーブン・スピルバーグの常識を疑った。 原題は、「Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull」 2008年アメリカ映画 (2008.07.23) |
||||||
|
||||||
<TAKUMI シネマ>のおすすめ映画 2009年−私の中のあなた、フロスト/ニクソン 2008年−ダーク ナイト、バンテージ・ポイント 2007年−告発のとき、それでもボクはやってない 2006年−家族の誕生、V フォー・ヴァンデッタ 2005年−シリアナ 2004年−アイ、 ロボット、ヴェラ・ドレイク、ミリオンダラー ベイビィ 2003年−オールド・ボーイ、16歳の合衆国 2002年−エデンより彼方に、シカゴ、しあわせな孤独、ホワイト オランダー、フォーン・ブース、 マイノリティ リポート 2001年−ゴースト ワールド、少林サッカー 2000年−アメリカン サイコ、鬼が来た!、ガールファイト、クイルズ 1999年−アメリカン ビューティ、暗い日曜日、ツインフォールズアイダホ、ファイト クラブ、 マトリックス、マルコヴィッチの穴 1998年−イフ オンリー、イースト・ウエスト、ザ トゥルーマン ショー、ハピネス 1997年−オープン ユア アイズ、グッド ウィル ハンティング、クワトロ ディアス、 チェイシング エイミー、フェイク、ヘンリー・フール、ラリー フリント 1996年−この森で、天使はバスを降りた、ジャック、バードケージ、もののけ姫 1995年以前−ゲット ショーティ、シャイン、セヴン、トントンの夏休み、ミュート ウィットネス、 リーヴィング ラスヴェガス |
||||||
|