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スーパーマンが悪人という、とても面白い着想で、どんな展開になるのだろうか、と興味が引かれた。 主人公を悪人にするのは、興行を考える映画にとっては、勇気がいることである。 しかも、スーパーマンという正義の味方を、悪人にしてしまう大胆さである。
主人公のハンコック(ウィル・スミス)はスーパーマンだから、本来なら正義の味方で、人気者のはずである。 なぜ彼が、問題視されているか、最初のうちは平凡な説明である。 たしかに彼は正義の味方なのだが、やり方が派手すぎて、犯人を捕まえるよりも、彼の行為による被害が大きくなってしまう。 だからありがた迷惑なのだ、と判ってくる。 そんな彼は、今日も踏切で立ち往生している車から、列車と衝突する直前に、レイ(ジェイソン・ベイトマン)という広告屋を助けた。 このときにも、レイを助けるために、貨物列車を1編成そっくり毀してしまう。 アメリカの貨物列車は長い。それを全部毀してしまう。 またまた評判が悪くなる。 しかし、助けられたレイは感謝する。 彼は王者の孤独に襲われ、他人との関係が作れなかったのだ。 レイはハンコックに、スーパーマンはヒーローなのだ、と言って聞かせ、イメージの転換を図らせる。 ハンコックは孤独ではない、他人に感謝すれば人間関係も充実する。 そうレイは言ってきかせる。 この映画は、着想につきる。 こんな映画はアメリカでしか思いつかないだろう。 いかにもヒーロー好きのアメリカ映画である。 ヒーローと王者の孤独、ともに我が国では馴染みが薄い。 個人の人格がはっきりした社会では、誰でも孤独になる。 孤独の裏返しとして、ヒーロー願望も生じる。 1人だと思っていたハンコックに、実は同類がいたという展開がおもしろい。 レイの奥さんであるメアリー(シャーリーズ・セロン)が、スーパーウーマンだったのだ。 しかもレイはそれを知らない。 夫婦でそんなはずはないだろうと、ここはちょっと嘘っぽいが、これには目をつぶろう。 最近の映画では、白人は白人、黒人は黒人同士で結ばれるシーンが多い。 黒人と白人の2人が結ばれることはない。 それに、幸福そうなレイに、メアリーが浮気するはずがない、と不思議に感じたシーンである。 黒人と白人の恋愛映画は少ない。 黒人のウィル・スミスと白人のシャーリーズ・セロンが、恋に陥るはずはないと思っていると、かつて彼等は夫婦だったというのだ。 過去に夫婦だったというのであれば、ラブシーンを演じなくてもすむ。 たぶん、こうして人種差別は克服されていくのだろう。 幸せな生活を壊されたくないメアリーと、困りもののハンコックとの闘争が、街を狭しと展開される。 しかし、この設定はちょっと苦しいだろう。 病院でのシーンなど無理が目立つ。 そのため後半になると、まったく面白さが消えてしまう。 オリジナルの脚本らしいが、面白いストーリーをつくるのは難しいのだ。 悪なるヒーローという、アメリカにして初めて語りうる主題を、娯楽作品に仕上げるのは大変な作業なのだろう。 お金はかかっているが、オリジナルであるだけに、新たな主人公をつくるのは難しいと思う。 偉大な失敗作だろう。 原題は「Hancock」 2008年アメリカ映画 (2008.09.05) 後日談: |
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