タクミシネマ         かけひきは、恋のはじまり

かけひきは、恋のはじまり 
ジョージ・クルーニー監督 

 いま脂がのっているジョージ・クルーニーの監督・主演の映画である。
いくら映画とはいえ47歳じゃあ、アメラグの選手はちょっと無理じゃないでしょうか。
他の俳優さんを主人公にすえるべきで、この映画では監督業に専念すべきです。

 1920年代、まだスポーツが興行の域をでずに、胡散臭いものと見られていた。
そんな時代に、アメラグのプロ化を描いた映画だが、コミック仕立てになっており、アメリカ人にはおかしくも懐かしいだろう。
残念ながら、日本人にはちょっと馴染みがなかった。

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 プロ組織が確立していないので、アメラグのチームは経済的にどこも大変だった。
ドッジ(ジョージ・クルーニー)の所属するブルドックも火の車だった。
スポンサーが下りてしまい、チームはとうとう解散になってしまった。
しかし、ドッジはチームの再建をめざす。

 そんなところへ、学生のスタープレーヤーであるカーター(ジョン・クラシンスキー)が、武勲をたてて国民的な英雄になって復員してくる。
彼をチームに引き込めば、ブルドックスを救えると考えたドッジは、スカウトしにシカゴに向かう。
カーターのマネージャーであるC.C.フレイジャー(ジョナサン・プライス)は、高額のフィーに吊られてカーターをブルドックスへ入れる。

 当時、学生たちはいくらフットボールが得意でも、卒業したら堅気の職業につくものだった。
カーターも弁護士になるつもりだったが、高額のフィーに吊られて、プロのフットボール・プレイヤーになる。
そのまま順調にいくはずだったが、じつはカーターの武勲が嘘だというのだ。


 カーターの武勲をめぐって、シカゴ・トリビューンのレクシー(レニー・ゼルウィガー)が動き始める。
ここでドッジとめぐりあい、ドッジに一目惚れされてしまう。
あとは、アメラグの創生期物語と、ドッジ、カーターそれにレクシーが、3つ巴になって映画は進んでいく。

 毎度感心するのだが、1920年代に設定されたこの映画も、当時の時代が見事に復元されている。
もちろん、アメラグの衣装から、車、ファッション等々、まだ男が男であり、女が女であった時代の艶っぽいシーンが、これでもかとばかりに登場する。

 ドッジの乗るのは、年代物のサイドカーである。
レプリカだろうが、当時を彷彿とさせる姿に、古い車を見なれた目には、思わずはっとさせられる。
それから、男たちがみな帽子をかぶっている。
禁酒時代のアメリカ、男たちが潜りの酒場にかよう。
そこへ警察の手入れ。

 アメリカでは1920年に、女性の参政権が認められた。
そこで女性の社会進出が始まるのだ。
そうした社会背景を背に、レクシーの女記者である。
シカゴ・トリビューンというメジャーの新聞社に、女性が採用されたかどうかは不明だが、女性の台頭が始まったのは間違いない。

 鼻っ柱の強い女性記者を、レニー・ゼルウィガーが熱演しているが、ややパターン化した演技である。
たぶん、強くなりすぎた現代女性たちを、1920年代に置くことによって、男性たちは良き時代を懐かしんでいるのだろう。
当時の女性は、鼻っ柱が強くても、茶目っ気があったと言いたいようだ。

 今よりはるかに男性支配が強い社会のなかで、女性が社会人として生きるには、女性のフェロモンを振りまかなければ、やっていけなかったのだろう。
男性とまったく同じスタンスでは、摩擦がおきてしまうので、女性たちは女性性をアレンジして、職場につかざるを得なかったのだ。

 コケッティシュさを演じながら、必死に働く女性は、男性たちにはまだ本当の競争相手ではなかった。
女性が一段低い生き物と見られていたから、男性たちは良き紳士を演じることができたのだ。
本当に女性が自立して来るには、1950年代の専業主婦の憂鬱を経なければならなかった。
今から見ると、それがよくわかる。


 「かけひきは、恋のはじまり」なんて訳の判らない邦題がついている。
原題は「Leatherheads」である。
当時は、ヘルメットがなく、皮の帽子をかぶっていたので、フットボール・プレイヤーはレザーヘッドと呼ばれたらしい。
2008年アメリカ映画
(2008.11.28)

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