タクミシネマ          ブロードウェイ♪ブロードウェイ、コーラスラインにかける夢

ブロードウェイ♪ブロードウェイ
 コーラスラインにかける夢 
ジェイムズ・D・スターン監督 

 昔のミュージカル「コーラスライン」を、再演するにあたって、完全オープンのオーディションをおこなった。
その経過のドキュメンタリーということで、そうとうに点を甘くしないと、見続けることは難しい。


ブロードウェイ♪ブロードウェイ [DVD]
ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢
 応募者3千人の中から19人が選ばれるのだが、まず19人もの人数を追うことになったので、物語が散漫になってしまった。
ドキュメンタリーであっても、商業映画として公開する以上、物語性が必要である。
この映画はなべて見せようとするあまり、物語の芯を作っていない。

 映画としては面白くない。
しかし、有名な作品の再演に、完全なオープン・オーディションを実施するのは、さすがにアメリカである。
応募する方も、アメリカ国内は言うに及ばず、日本人をはじめ世界中から、応募者が集まってくる。

 コンペとかオーディションといった公開審査は、応募する方ではなく審査する方の力量が試される。
審査する方に、きちっとした審査基準が必要で、イメージに合わないと言ったあやふやな基準では、3千人もの審査に対応できない。

 この映画では、審査員たちが比較的和気藹々としていたが、そんなシーンばかりではないはずだ。
再演を演出するボブ・エイヴィアンが、審査の中心になっていたが、審査の席上には旧作に出演したバイヨーク・リーがいたりして、あれでは審査が散漫になってしまう。

 オーディションのドキュメンタリーであっても、それを記録した映画を通じて、何を訴えるかがないと、詰まらないものになってしまう。
ドキュメンタリーであっても、やはり訴えるものを掲げないと、劇場用映画にはならない。

 落ちた応募者たちが、自分とは基準が違っただけだと、サバサバしていた。
落ちたら最後といった悲壮さが漂っていると、オーディションを行うほうも気が重い。
さまざまなオーディションが行われて、たくさんのチャンスがあるアメリカだからの風景である。

 確たる審査基準をもったオーディションが、たくさん行われることは、応募者を鍛えると同時に審査員をも鍛える。
だからこそ、新たなダンスや演劇が生まれてくる。
映画自体はつまらなかったが、アメリカの表現における背景が感じられた。 



 原題は「Every Little Step」であり、原題のままのほうが良かったのは、言うまでもない。
2008年アメリカ映画
(2008.11.03)

TAKUMI シネマ>のおすすめ映画
2009年−私の中のあなたフロスト/ニクソン
2008年−ダーク ナイトバンテージ・ポイント
2007年−告発のときそれでもボクはやってない
2006年−家族の誕生V フォー・ヴァンデッタ
2005年−シリアナ
2004年−アイ、 ロボットヴェラ・ドレイクミリオンダラー ベイビィ
2003年−オールド・ボーイ16歳の合衆国
2002年−エデンより彼方にシカゴしあわせな孤独ホワイト オランダーフォーン・ブース
      マイノリティ リポート
2001年−ゴースト ワールド少林サッカー
2000年−アメリカン サイコ鬼が来た!ガールファイトクイルズ
1999年−アメリカン ビューティ暗い日曜日ツインフォールズアイダホファイト クラブ
      マトリックスマルコヴィッチの穴
1998年−イフ オンリーイースト・ウエストザ トゥルーマン ショーハピネス
1997年−オープン ユア アイズグッド ウィル ハンティングクワトロ ディアス
      チェイシング エイミーフェイクヘンリー・フールラリー フリント
1996年−この森で、天使はバスを降りたジャックバードケージもののけ姫
1995年以前−ゲット ショーティシャインセヴントントンの夏休みミュート ウィットネス
      リーヴィング ラスヴェガス

 「映画の部屋」に戻る