タクミシネマ       団塊ボーイズ

団塊ボーイズ   ウォルト・ベッカー監督

 老年にさしかかりつつある男4人が、何を思ったかオートバイで、アメリカ大陸を横断しようとした。
ドタバタ劇のロード・ムーヴィーで、楽しいB級映画である。
しかしながら、どこでも年寄りは困った者だ。

WILD HOGS/団塊ボーイズ [DVD]
IMDBから

 ウディ(ジョン・トラボルタ)は事業に失敗して、自己破産。
そして、モデルの奥さんとは離婚。
残ったのは1台のハーレーだけ。
ダグ(ティム・アレン)は歯医者だが、変化のない毎日に覇気がなくなった。
彼は元気だった若い頃を、振り返っていた。
ボビー(マーチン・ローレンス)は失業中で、小説家を目指している
が、芽が出る希望はない。
ダドリー(ウィリアム・h・メイシー)は、コンピューター・オタクで結婚もできない。

 4人は冴えない日々を振り払うべく、カルフォルニアの海をめざして、オートバイの旅に出る。
すでに通俗的な生活習慣が身についた彼等が、若い頃のような無計画なオートバイの旅を楽しもうとする。
しかし、行く手には障害が山盛り。


 オートバイ好きなら黙って、もしくは笑いながら画面にのめり込める。
様々なハーレーがオンパレード。
アメリカでオートバイといえば、今でもハーレーをさすのだなと、日本人としてはちょっと気になるところ。

 オートバイは趣味性が強いので、自分の生き方や性格が反映される。
世界のオートバイ市場は、いまや日本車の独占状態のはずだが、アメリカだけは違うらしい。
おそらくハーレーは、男性的なマッチョの象徴であり、たんに速く走るためのものではないのだろう。

 映画のなかでも、ハーレー乗りの無法集団が登場するが、彼等のマッチョさときたら、完全に一時代前のスタイルである。
時代から取り残されてしまった男たちの、懸命なあがきがハーレーに象徴されている。
それは4人にも共通で、ハーレーはいわば負け犬の象徴である。

 情報社会にのれない男たちが、アメリカでもたくさんいるのだろう。
無法者になるほどのガッツはなく、ただ時代から取り残されてしまった4人の男たち。
50年遅れの「イージー・ライダー」といったところだろうか。
あらためて自分探し、いや自己逃避の旅に出る。

 この映画を見ていると、アメリカという国は幾つになっても、チャレンジを良しとするのだと感じる。
恋もチャレンジなのだ。
幾つになっても恋することを賛美する。

 ダドリーを演じたウィリアム・H・メイシーは、1950年生まれだから、今年で58歳である。
我が国なら、58歳の彼が恋人が欲しいというのは、もうギャグでしなかいだろう。
冷やかされるか、年甲斐もなく女を求めるアホなオヤジ、といった設定になりそうだ。

 しかし、この映画では、ダイナーを経営するマギー(マリサ・トメイ)が、彼の恋人になる。
マリサ・トメイは年をとったとはいえ、いまだ44歳の女盛りで、充分の美女である。
我が国では、高齢者の恋を肯定的には見ない傾向が強いが、アメリカでは何歳になっても恋を賛美する。


 我が国では、高齢者の恋は、男に付いてくる女探しとなる。
アメリカ映画を見ていると、女性の力が非常に強くなっている。
この映画でも、はるかに年上のダドリーのほうが、どうも収入が少なそうだ。
映画だからの話だろうが、収入などを無視して性格だけで男女がくっつくのは、アメリカ的というべきなのだろうか。

 原題は「Wild Hogs」  2007年アメリカ映画
(2008.02.15)

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