タクミシネマ        さよなら。いつかわかること

さよなら。いつかわかること
ジェームズ・C・ストラウス監督

 男性である夫が戦死する例は、いままで沢山あったろう。
悲しい事実だが、残された者たちは耐えてきた。
男女が平等になり、女性も戦地に赴くようになった。
当然に女性も戦死する可能性がある。
静かに反戦を訴える映画で、アメリカの真面目さがよくでている。

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IMDBから

 高校卒業で入隊した男性スタンレー(ジョン・キューザック)は、
軍隊で運命の女性グレイスにであって結婚。
2人の娘にめぐまれ、幸せな家庭生活を営んでいたが、
兵士である妻グレイスはイラクに出征中であった。

 グレイスの訃報がもたらされる。
彼は万が一を考えることはあったが、いざ事実となると平静を保てない。
12歳のハイディ(シェラン・オキーフ)と8歳の娘ドーン(グレイシー・ベドナルジク)には、母の死は重すぎる事実である。
母親の死を、娘たちにどう伝えて良いかわからない。

 彼は自分一人で耐えられなくなり、2人をフロリダの遊園地へと誘う。
途中で、母親を頼るが不在。
苦しいだろう。
伴侶を亡くした辛さがよく伝わってくる。
台詞では辛いとは言わない。
台詞で説明することは全くない。
ただ、映像で演技で辛さを表現している。

 正面から反戦を主張するなら、衝撃力は薄い。
この映画は、スタンレーも志願兵だったという。
夫婦そろって兵士だった。
その1人が戦死したのだ。
正しいと胸を張れる戦争なら(正しい戦争があるかは疑問だが)、戦死もやむを得ないだろう、と納得する。
しかし、この戦争は正しいのだろうか。

 兵士を志願したスタンレーは、この戦争を正しいと思いたいが、
自分の伴侶が殺されると自制心を失った。
そこが強烈な反戦の主張に仕上がっている。
言葉で反戦を訴えるのではない。
彼の立場自体が、妻の死の苦しみをよく体現している。

 家にとどまるより、外へと出たほうが、いくらか気分が楽になるだろう。
それもわかる。
娘の年齢も、意味深長である。
こうした家庭でも、兵士は出征しているだろう。
自分には死は来ないと思っているわけではないが、いざ死と直面すると何とも言いようがない。
クリント・イーストウッドが音楽を担当しており、彼は完全に反戦派になってしまったようだ。


原題は「Grace is Gone」
 2007年アメリカ映画
(2008.05.08)

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