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最高の人生の見つけ方    ロブ・ライナー監督

 ロブ・ライナーといえば、1986年に撮られた「スタンド バイ ミー」だろう。
1947年生まれのこの男性は、ずいぶんと若いイメージがあったが、すでに60歳になっている。
この映画のように、アメリカでも人生の終末が、注目されているのだろうか。

 余命わずかの富豪のエドワード(ジャック・ニコルソン)と、自動車整備工のカーター(モーガン・フリーマン)が、同じ病室で出会う。
えっー、大富豪が相部屋かと思うが、
この病院はエドワードの所有で、彼は2人部屋の病室だけしか作らなかった。
個室を作ると金がかかるので、全室2人部屋にして、金儲けに専念していた。

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 個室は儲から作らないという、その彼が入院した。
だから、必然的に2人部屋に入ることになった。
しかし、この出会いが、彼に最高の人生をもたらした。
余命が残り少ないのを知った彼らは、妙に気があった。
そして、人生でやり残したことをやってみようと決意した。

 2人でやりたいことをリストアップする。
このリストが、棺桶に入れるリストをもじって、「The Bucket List 」と呼ばれる。
2人で選んでいるから、自分のやりたいことだけではない。
エドワードの望みは、きわめて行動的である。
対して、カーターの夢は、じつに慎ましい。


 しかし、2人でやると決めた以上、自分の好きや嫌いは言っていられない。
まず、スカイ・ダイヴィングに挑戦する。
もちろん、カーターはスカイ・ダイヴィングなど大嫌いだが、とうとう付き合わされる。
そして次には、カーターの望みのマスタングに、レース場で乗る。

自家用ジェットで世界一周などするするが、この話の主題は家族である。
しこたま金を稼いだエドワードは、4回結婚し子供が1人できた。
しかし、この子供とは、いまや絶縁状態である。
エドワードは会いたいのだが、子供のほうが拒否しているのだ。
もちろん、その理由はエドワードにある。
自分の考えだけで、子供にさまざまなことを押しつける。

 エドワードの行為が、いくら親切心からだと言っても、
子供の人格を無視した越権行為は、拒否されても仕方ない。
我が国では、子供は親の指示に従うべきだと考えられているが、
先進国の標準は、子供は親の所有物ではないという。
だから親は、子供の人格を尊重しなければならない。

 エドワードは会いたい子供に、頭をさげることができない。
それをカーターが何とか取り持ってくれる。
エドワードは余計なことをするなと言うが、やはり嬉しかった。
孫に会えたエドワードは、至上の幸福感を味わう。

 「The Bucket List 」に最後に残ったのは、世界一の美女とキスをするだった。
エドワードは子供と仲直りして、孫にキスできたのだ。
彼にとって、孫こそ世界一の美女だ。
彼は感動で胸が熱くなって、何も言えなくなる。
エドワードが子供に頭をさげ、孫と仲良くなることが、この映画の主題だったのだろう。

 アメリカ映画は、子供に親に従えと説教することはない。
反対に、親にたいして、子供に心を開けと言う。
その意味では、原題のままではよくわからないだろうから、「最高の人生の見つけ方」という邦題は、とても合っている。
あり得ない設定の映画だが、やはりアメリカ映画である。
 2007年アメリカ映画   (2008.05.15)

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