タクミシネマ         アイム ノット ゼア

アイム ノット ゼア   トッド・ヘインズ監督

 まだ生きているボブ・ディランの伝記映画、といったら良いのだろうか。
彼の活動と同時代で青春を送ってきた人には、とてもよくわかるエピソード満載の映画なのだろう。
ボクは残念ながら「風に吹かれて」を知っている程度だから、今いち、よく判らなかった。

アイム・ノット・ゼア [DVD]
IMDBから ケイト・ブランシェットのボブ・ディラン

 映画の作りは凝っている。
単なる伝記映画にせず、フィクションのような仕立てになっている。
クリスチャン・ベール、ケイト・ブランシェット、リチャード・ギア、ヒース・レジャー、ベン・ウィショー、それにマーカス・カール・フランクリンの6人が、ボブ・ディランのさまざまな側面を演じている。
いずれもそっくりらしい。

 1人の俳優が彼を演じるのではなく、6人が演じるというのは、良い着眼だと思う。
彼くらいの表現者になれば、しかも50年に近いキャリアであれば、一面的であるはずがなく、
6人が演じた方がリアリティがあるかも知れない。
しかも、彼はその表現様式を何度も変えているから、余計この方法が適切だったろう。

 彼の詩が、とても叙事的だったことに驚いた。
我が国の表現は、とても叙情的なものが多いが、
叙情的な表現は、通用する時代が短く、しかも空間も狭いのではないだろうか。
彼の表現は、叙事的だから様式を変えると、かつてのファンから反発されるのではないだろうか。
もっとも、劇場パンフレットには叙事的な詩を集めたとあるから、全部が叙事的というわけではないだろう。


 個人の伝記映画だから、主題がどうのと言ったことはない。
ボブ・ディランの多様な側面が描かれているが、あたりまえのことに歌が上手い。
それに驚くのは、彼のつくった歌の多いこと。
さいごのタイトルでは、延々と続く曲が彼のものだ。
 2007年アメリカ映画
(2008.05.08)

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