タクミシネマ    チャーリー・ウィルソンズ・ウォー

チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
マイク・ニコルズ監督

 冒頭で、実話にもとづくと文字で説明される。
しかし、これが本当の話なのだろうか。
実話だとすると、大変な話だ。
1980年代の話、アフガンでの戦争はソ連が敗れたというが、援助国の話はそれほど大きな話題にならなかった。

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 アフガニスタンにかぎらず途上国が、大国と戦えば、あっという間に負けるのが当然である。
ベトナム戦争という歴史があるから、小国が大国に勝てるかのように思いがちだが、
中国やソ連が援助したから勝てたのであり、ベトナムだけではアメリカに勝てなかった。

 映画では下院議員チャーリー(トム・ハンクス)の正義感と、
アフガンからの援助依頼に応えた形になっているが、それだけではないだろう。
1980年代には冷戦が続いており、アメリカはアフガンで代理戦争を仕掛けたのじゃないだろうか。
実態は、ソ連をたたければ好都合と、渡りに船だったのではないか。

 しかし、映画の話では、アフガニスタンの悲惨な現状に感じたアメリカの下院議員が、
テキサスの大富豪ジョアン(ジュリア・ロバーツ)と組んで、ソ連撃退作戦を遂行したことになっている。
実行部隊になったのは、CIAを干されたガスト(フィリップ・シーモア・ホフマン)である。
しかも、この作戦は極秘裏に行われたのだ。


 最初は500万ドルだった援助金が、1000万ドルになった。
それが非公開の委員会だけで、軍事援助が数億ドルの金額までふくれあがる。
しかも、アメリカから直接に援助すると差し障りがあるというので、ソ連製の武器をアフガン・ゲリラに送り込む。

 ソ連製の武器を大量に入手できるのは、共産圏と関係の深い国である。
そこでエジプト等を巻き込み、一種のマネーロンダリングをやる。
このとき、なぜアメリカが表に出たくなかったのか、そのあたりの事情がよく判らないが、世界は権謀術策の見本である。

 映画は、酒と女に目がない下院議員チャーリーを、
お気楽な主人公に設定しているので、およそ政治物とは違うタッチである。
テキサス出身の彼は、ほとんどノンポリで、投票には何の原則もない。
そのために、ほかの議員には貸しをたくさんもっていた。

 しかも彼は、チャーリーズ・エンジェルズと称して、自分の秘書たちにはずらっと美人をそろえていた。
これも本当?と思えてくる。
いくら1980年代だとはいえ、美人しか採用しなかったら、大問題だったろう。
そのうえ、勤務中からお酒を飲んでいる。
どこまでが本当なのだろうか。

 ちょっと気になったのは、話がアメリカ国内向けになっていることだ。
ハリウッドは外国へも輸出できるから、映画でお金が稼げるのだ。
世界を意識して映画を作っていたから、海外でも受けいれられたはずである。
それが国内事情に通じていないと、よく判らない映画をつくっている。
大統領選挙もあるし、アメリカはモンロー主義的に、内向きになりつつあるのだろうか。
内向き映画が続いている気がする。 

 秘書のチャーリーズ・エンジェルズたちのほうが、ジュリア・ロバーツよりはるかに美人なのに、
なぜジュリア・ロバーツは美人と言われるのか。
この映画でも、やっぱり判らなかった。

 2007年アメリカ映画   (2008.05.21)

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