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女性の社会進出がすすむアメリカでも、バリバリの仕事人間は、やはり男性が多いのだろう。 「ミランダが男性だったら、やり手の経営者と言われるだけだ」というアンディ(アン・ハサウェイ)の台詞が、きわめて説得力を持つ。 原作者の実体験の映画化だと言われると、複雑な心境でもあるが、ここまでの実力主義はかえって気持ちよさも感じる。
ヴォーグといえば、ファッションを切り開いてきた雑誌である。 洋服はお針子さんがつくるが、洋服を創るのはデザイナーであり、洋服をファッションへと仕立てるのは、トレンド・メーカーたるファッション雑誌である。 少なくともオートクチュールなどへの影響力において、ヴォーグの力は大きなものがあった。 ヴォーグの編集長といえば、鳴く子も黙るトンガった人間であろう。 原作者のローレン・ワイズバーガーは、1977年生まれで、1999年にコーネル大学を卒業後、すぐにファッション誌・ヴォーグの編集部に就職した。 9カ月間、編集長アナ・ウィンターのアシスタントとして勤務した体験が、この映画の元になったという。 映画のなかでは、ファッション雑誌「Ranway」の編集長ミランダ(メリル・ストリープ)が、ヴォーグの編集長に相当する。 ファッション志向の女性は、時として頭が悪いことがある。 ミランダはファッション・センスよりも、一流大学出の賢さを選んだのだ。 ジャーナリスト志望のアンディは、腰掛けのつもりで入社したが、 その仕事は半端ではなかった。 なにしろミランダが24時間の仕事人間だから、それに付き合う秘書も、仕事人間にならざるをえない。 影では“プラダを着た悪魔”と呼ばれているミランダは、あだ名のとおりアメリカ人にしては珍しく、人を褒めない。 自分勝手に予定を変更し、いつも雷を落とし、秘書に無理難題を押しつけている。 全女性の憧れの職場でありながら、彼女の秘書は長くは務まらなかった。 しかし、アンディは違った。 アンディは持ち前の賢さを発揮して、ミランダの望むことを先回りして、手配していった。 そして、ファッション・センスもあっというまに洗練されて、今やミランダの片腕として、第一秘書になっていた。 しかし、仕事第一のミランダとは、最後のところで信念がぶつかってしまい、とうとう決別していくことになる。 今回はミランダのほうが、退職を惜しんだ。 パリ・コレの様子も面白いが、ニューヨークのファッション業界が面白い。 また、ナイジェル(スタンリー・トゥッチ)のアドヴァイスを得て、アンディのセンスが洗練されていく様子は、目を見張るものがある。 終盤に彼女が着ている洋服は、ほんとうにカッコイイ。 ちょっと残念なのは、痩せていなければ、これらの洋服が似合いそうもないことだけだ。 悪魔役のミランダのファッションも素晴らしい。 こちらは実力派のビジネス・ウーマンとして、貫禄があり、余裕すら感じさせるファッションである。 一時は太ったメリル・ストリープが、それなりの体型になって、格好良く着こなしていた。 また彼女は、横柄に感じられる女性経営者を、したたかに演じているが、あの程度の横柄さは男性経営者なら、特別に問題とはされないだろう。 女性はやさしく、婉曲に表現することが、当然と見なされている世の常識があるから、彼女のように直接的に表現すると、悪魔だと陰口をたたかれる。 しかし、彼女は部下の実力は、きちんと冷静に評価する。 そして、伸びようとする人間には、それなりの機会を与えている。 アンディが仕方なしに下した決断だと留保を付けると、決断の結果は自分の責任だという。 これも潔い。 それは仕事の性格がそうさせるのであり、フワフワしていないと生きていけないのだ。 ファッション業界はフワフワしているにもかかわらず、現実の人間が行動し、大きなお金が飛びかっている。 この映画は、ファッション業界がみえると、奥深いものがありそうだ。 しかし、あまり難しいことを考えずに、着せ替え人形のように、つぎつぎに新しい洋服が、登場する様を楽しむと良い。 なにせ寒いときでも、女性は流行となれば、競ってミニスカートをはくのだから。 2006年アメリカ映画 (2006.11.22) |
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