タクミシネマ        16 ブロック

16 ブロック     リチャード・ドナー監督

 ニューヨーク市警察の敏腕刑事だったジャック(ブルース・ウィリス)は、足に怪我をおって第一線を退いていた。
そして、今では酒浸りになって、定年を待っていた。
そんな彼が、被疑者のエディ(モス・デフ)を、留置場から16ブロック先の裁判所まで、護送することになった。
簡単な任務だったが、その被疑者は警察内部の犯罪を立証するための証人だったので、警察官たちから命を狙われることになった。

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 本来なら30分もあればすむ護送だったが、悪徳警察官たちの襲撃が始まり、裁判所への道はとてつもなく長いものとなった。
ブルース・ウィリスは歳をとったせいでか、いつものような派手な行動は見せず、屈折した性格だけを引き継いでいる。
そして、被疑者のエディは黒人特有の喋り方で、延々と喋り続け、それが見せ物・聞かせ物になっているのだろうが、日本人の我々には馴染めない喋りである。

 この映画は、主題といったものを論じるまでもなく、チャイナ・タウンで繰り広げられる活劇を楽しむものだろう。
大勢の人たちでごった返すチャイナ・タウンは、すべてがエキストラなのか、映画とは関係のない人たちなのか、ちょっと区別が付かない。


 アメリカのことだから、ちょっとでも画面に姿が出るときは、被写体になる人の許可を必要としているとすれば、エキストラと考えるべきだろう。
しかし、それにしては自然な人の流れである。
群衆には気づかれないように、手持ちカメラをそっとまわした、と考えた方が当たっているかも知れない。

 チャイナ・タウンはしばしば映画の舞台になる。
今回も、地下の厨房や機械室など、へーと思える場面がたくさんある。
ジャックが市バスをバス・ジャックして、市内を暴走させるが、その頑強な車体には驚かされる。
何台ものパトカーを踏みつぶし、4輪ともパンクしたまま暴走する様は、尋常ではない。

 アメリカ映画では、警察官の悪事がしばしば描かれる。
物語としては面白く、正義と悪がひっくり返るのは、我が国のヤクザ映画といったところなのだろう。
しかし、実際もあんなに腐敗しているのだろうか。
ちょっと想像できない感じもあるが、お話としては面白い。
証人がエディからジャックに代わるのは良いとしても、もう少し仕掛けがあっても良さそうだ。
それに悪人が改心するというのは、アメリカ的ではない。

 お金はかかっているが、典型的なB級映画である。
しかも、最後に相手の証言をテープ録音するのは、彼がバスのなかでマイクロカセットを、手にしたときから見えていた。
だから、悪徳警官フランク(デビッド・モース)と対峙したとき、フランクに喋らせるているのはテープに録るためだと、すぐにわかった。
案の定、その直後にテープが証拠になった。

 ブルース・ウィリスがずいぶんと痩せており、役作りのために苦労したのだろう。
最後のシーンでは、かつての太った身体になっていたから、順番を逆にして最後から撮影したのかも知れない。
いずれにせよ、アクション俳優は年齢との戦いであるのは間違いない。
  2006年アメリカ映画
  (2006.10.25)

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