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創作のために取材した現実に、作家が絡め取られ、現実から報復を受けるという主題は納得できる。 しかし、カポーティを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンが、そっくりさんの演技だと言うだけである。 映画としては特別に優れた出来ではない。
この新聞記事に興味を感じたカポーティは、事件をもとに小説を書こうと、 取材のために犯人に接触を始める。 一審で死刑が決まっていたが、彼は弁護士を立ててやり控訴させる。 長引かせることが、彼の創作に役に立ったのだ。 最初は、自分の創作のネタにするつもりだったが、犯人の1人ベリー(クリフトン・コリンズjr)が、 自分と似た境遇に育ったことがわかり、彼等は心を通わせてゆく。 弁護士を紹介したことなどが功を奏して、ベリーは日記を読ませてくれ、2人は友人になれそうだった。 しかし、ベリーは所詮はネタにすぎない。 自分の外にあった事件が、自分の内部に侵入し、彼の思考を決めつけてくる。 人気作家だった彼は、かろうじて「冷血」を仕上げるが、 その後は物語をまとめることができなくなってしまった。 現実を弄んだことの見返りが、執筆完成の不可能という事態になって返ってきた。 カポーティはニューヨークでは有名人であっても、田舎の人間は彼を知らない。 いや有名であるか否かなどどうでも良い。 創作のためだという理由で、殺された者たちへの追悼より、 事件をほじくり返し、助かりたい犯人の心理を利用した。 たしかに創作は神の仕事であり、神を代理するものは何をしても良いだろう。 しかし、人間は神ではない。 現実を弄べば、かならず現実から報復される。 この映画も、創作自体の価値は認めながら、人間が神の代理になることへの罪を描く。 暗く変化のない画面が、延々と続き、滅入ってきそうな映画である。 暗い映画がダメだというわけではないが、なぜこの映画こんなに人気があるのだろうか。 封切り2週間たった平日だというのに、満員に近い観客だった。 2005年アメリカ映画 (2006.10.14) |
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