タクミシネマ         カポーティ

カポーティ      ベネット・ミラー監督

 創作のために取材した現実に、作家が絡め取られ、現実から報復を受けるという主題は納得できる。
しかし、カポーティを演じるフィリップ・シーモア・ホフマンが、そっくりさんの演技だと言うだけである。
映画としては特別に優れた出来ではない。


カポーティ &冷血 [DVD]
公式サイトから
 1959年11月14日、カンサスの田舎の一軒家に、2人組の男たちが押し入り、4人の家族を殺した。
この新聞記事に興味を感じたカポーティは、事件をもとに小説を書こうと、
取材のために犯人に接触を始める。
一審で死刑が決まっていたが、彼は弁護士を立ててやり控訴させる。
長引かせることが、彼の創作に役に立ったのだ。

 最初は、自分の創作のネタにするつもりだったが、犯人の1人ベリー(クリフトン・コリンズjr)が、
自分と似た境遇に育ったことがわかり、彼等は心を通わせてゆく。
弁護士を紹介したことなどが功を奏して、ベリーは日記を読ませてくれ、2人は友人になれそうだった。
しかし、ベリーは所詮はネタにすぎない。

 2人の犯人は、死刑が執行されるが、取材対象だった事件が、彼を拘束し絡め取り始める。
自分の外にあった事件が、自分の内部に侵入し、彼の思考を決めつけてくる。
人気作家だった彼は、かろうじて「冷血」を仕上げるが、
その後は物語をまとめることができなくなってしまった。
現実を弄んだことの見返りが、執筆完成の不可能という事態になって返ってきた。

 カポーティはニューヨークでは有名人であっても、田舎の人間は彼を知らない。
いや有名であるか否かなどどうでも良い。
創作のためだという理由で、殺された者たちへの追悼より、
事件をほじくり返し、助かりたい犯人の心理を利用した。
たしかに創作は神の仕事であり、神を代理するものは何をしても良いだろう。
しかし、人間は神ではない。
現実を弄べば、かならず現実から報復される。

 この映画も、創作自体の価値は認めながら、人間が神の代理になることへの罪を描く。
暗く変化のない画面が、延々と続き、滅入ってきそうな映画である。
暗い映画がダメだというわけではないが、なぜこの映画こんなに人気があるのだろうか。
封切り2週間たった平日だというのに、満員に近い観客だった。

2005年アメリカ映画
 (2006.10.14) 

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