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かろうじて見ることができるレベル。 学芸会のような演技でもないし、セリフの棒読みもなく、物語もきちんと展開されている。 あまりに嘘っぽいこともない。 我が国の映画は、このレベルなのだろう。
四国は讃岐にあるうどん屋の息子、香助(ユースケ・サンタマリア)が、親に反発してアメリカへと旅立った。 ニューヨークで芸人になろうというわけだ。 しかし、甘くはなかった。 すごすごと帰郷した。 そこで出会ったのが、ミニコミのタウン誌。 うどん特集をやることになり、それにのめり込んでいく。 讃岐には、膨大な数のうどん屋がある。 多くは製麺が中心で、その傍らでひっそりと、食べる客を相手にしている。 そのため、人知れない山間にあったり、田圃の真ん中にあったりと、いずれも人目に付きにくいところばかりだ。 客といっても近所の人が、たまたま立ち寄るにすぎない。 彼の生家もそんな一軒だった。 うどんブームが巻き起こる。 現在、東京近郊でも讃岐うどんの進出が見られるが、うどん屋の販促にのったキャンペーン映画であろう。 讃岐のうどん屋自体は、ジッチャン・バッチャンの家内製造だが、 東京進出の企業は大きな目論見があるに違いない。 役者たちは平均的な演技だったが、零細うどん屋のジッチャン・バッチャンたちの演技が、実に素晴らしい。 彼(女)等は、演技などまったくしていない。 ただうどんをつくって、それをいつもと同じように、カメラの前に差しだしているだけ。 しかし、カメラがあると緊張するのが当然なところ、彼(女)等は自然である。 いかに毎日の仕事とはいえ、演出が上手かったのだろう。 途中に挟まれたコミック仕立てのシーンも、悪くなかった。 画面をいくつにも割っての説明も悪くなかった。 こうした手法は、かならずしも映画的ではなく、失敗する例が多いなかで、 すれすれ合格といったところだろうか。 良かったのは、登場人物の性格づけと物語の展開で、 香助が死んだ父親の跡を継がずに、義兄(小日向文世)が継ぐのが自然だった。 彼女が語り手をつとめていたので、これは仕方ないところか。 しかし、香助と宮川とを結ばせて、跡取りにしなかったのは良かったのだが、 再度ニューヨークに行った香助をおって、彼女がニューヨークにいくのは蛇足だった。 その前で終わったほうが、いい余韻が残っただろう。 香助の父親を演じた木場勝巳が、自然な演技で上手かった。 義兄を演じた小日向文世も、良い人物設定で得をした演技だった。 そうとうにお金のかかった映画で、おもしろくない娯楽作品としても、見て損はないだろう。 しかし、おもしろおかしい喜劇映画と見ても、残念ながら底の浅い作品で、 時代認識の軽薄さが如何ともしがたい。 社会のなかでもまれる人間を描いてこそ、見る者を打つのだ。 この映画にかぎらず、我が国の表現が、時代を見る目を失って久しい。 人間が描けなくなっている。 そのため、出来事のおもしろさを、狙ってしか物語がつくれない。 どうしても薄っぺらな映画になっている。 そうはいっても、実生活ととんでもなく離れたセリフもなかったし、 若い役者たちもそれなりに演技していた。 面白さをねらって、面白く作れない我が国の映画は、いまだ隘路にはまったままである。 2006年日本映画 (2006.9.06) |
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