タクミシネマ       ローズ・イン・タイドランド

ローズ・イン・タイドランド   テリー・ギリアム監督

 「干潟のローズ」とでも言うのだろうか。
配給元の東北新社は、おそらく日本語の題名を付けることができなくて、
英語をそのまま日本のタイトルにしたのだろう。
よく分からない映画である。
テリー・ギリアムの時代は、すでに終わっていると感じる。

ローズ・イン・タイドランド [DVD]
公式サイトから

 母親がオーバードーズで死んだので、ローズ(ジョデル・フェルランド)という女の子は、父親(ジェフ・ブリッジス)と草原のおばあちゃんの家に向かう。
おばあちゃんはすでに亡かったが、空き家になった家はしっかりとあった。
ここで父親も、またオーバードーズで死んでしまう。

 不思議な親子が現れて、
ローズとのあいだで、草原の家を舞台に繰り広げられるお話が、意味がよくわからないまま延々と続く。
「不思議の国のアリス」がモチーフになっているのは判るが、
何と言っても山がなく、ただだらだらと画面が続くのだ。

 メジャーの映画だと、プロデューサーなどがチェックするだろうから、平板な映画になる可能性が減るだろう。
しかし、インディ系の映画が失敗したときは、老人の一人舞台となってしまい、ほんとうに悲劇である。
とりわけ過去に名声のある老人だと、ことは最悪になる。

 ミッチ・カリンという人が書いた原作があるらしいので、ほんとうは真っ当な話なのだろう。
それを麻薬大好き、ラス・ヴェガスをぶっとばせの老人が演出したのだ。
いまや麻薬の話は流行らない。
たぶん、麻薬が日常になり、かつてのように特別視するものではなくなった。
麻薬と平和裏に同棲できるようになったのだ。

 若者たちのあいだではいざ知らず、
わかった人間たちは麻薬におぼれずに、煙草のように楽しむことができるようになったかも知れない。
それに麻薬が何かを生むという幻想はなくなった、ハイになっても、それだけなのだ。
だから、テリー・ギリアムのセンスは、もう時代と同調できないのだろう。

 子供や障害者の無邪気さや残酷さを、ひっくり返してみせるのは理解できるにしても、
きちんと物語を終わらせてほしい。
大きなサメが、長い列車のアムトラックだということはないだろう。
子供を主人公にするのは、同時代的ではある。
時代感覚はまだ残っているのだろうが、しかし、持続する精神が萎えてしまっている。
おどろおどろしいモノを、登場させればいいわけではない。
途中で出ようかと思ったほど、退屈だった。
2005年英&カナダ映画
 (2006.8.07)

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