タクミシネマ       ライズ

ライズ    デビッド・ラシャペル監督

 アメリカでは居住地区が、年収や人種によって決まってしまうことが多い。
黒人しか住めないわけではないのに、黒人居住区となってしまったり、ピスパニック居住区になってしまう。
反対に金持ちたちは、自腹を切ってガードマンを配置して、一種の自治区を作ったりする。

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 ロス・アンジェルスのサウス・セントラル地区での話。
ここは黒人居住区である。
ご多分にもれずに治安が悪い。
ここではダンスが盛んで、ラップ音楽にのせて、彼等・彼女たちは踊る。
この映画に登場するダンスは、よく見るラップダンスとちょっと違う感じがするが、
でもだいたい同じと言っていいだろう。

 人間は、楽しいといっては踊り、哀しいといっては踊る。
踊りは健康な肉体だけあれば、他に何もなくても可能である。
フラメンコなどを見ても分かるように、ダンスというのは、歌と共に最も原始的な表現だろう。
この映画のなかでも、アフリカのヌバ人のダンスと重ねて、映し出されるシーンが何度も登場する。
そして、現代の貧しい人たちにとっても、踊りは最も手軽な表現方法だろう。

 ただダンスを見せても、映画にはならない。
そこに何か物語を作らなければ、映画にはならない。
映画はトミー(トミー・ジョンソン)という若者が、ダンス・パーティを広めることから始まる。
もともとダンスの好きだったこの地の人々は、彼のもとに集まり、ダンスに興じるようになる。
それはclownsと呼ばれるグループになる。
やがて、彼のもとからタイト(タイト・アイズ)がわかれ、krumpersという別のグループができる。
2つのグループが、大きな会場でダンス対決をする。

 映画としては、大会への過程を見せるのだが、当然にダンスがふんだんにでてくる。
シャープなリズム感から、肉体がしなやかに動く。
激しくセクシーで、実に楽しそうである。
ステップなどに特別の決まりはないらしいが、それでも上手い下手がある。
足も動かしはするが、足を地面につけたまま、上半身とくに腕の動きが中心である。

 監督自身が、この地域に住んでいるということで、身近なシーンを取り上げているのだろうが、
ダンスとしては素晴らしくても映画としては物足りない。
監督は写真家だというが、映画と写真は別物のようだ。
物語作りを別にしても、露出や画面構成が充分ではないのが気になる。


 1960年代には、ニュースで黒人のことをニグロと呼んでいたのには驚いた。
今、ニガーとかニグロといった言葉は、超差別用語であり、ニュースで使ったら大事件になる。
当時は許されていたのかと思うと、隔世の感がある。
そして、もう一つ驚いたことがあった。
それは、我が国のトヨタ自動車が、ダンス大会のスポンサーになっていたことだ。
トヨタは日本とアメリカでの活動の仕方が、随分と違うようだ。 
2005年アメリカ映画
 (2006.2.27)

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