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不思議な映画である。 カルフォルニアのサンフェナンドヴァレーに、カウボーイもどきの男ハーレン(エドワード・ノートン)がやってくる。 彼はガソリンスタンドで働き始める。 彼はそこへ立ち寄ったトーブ(エヴァン・レイチェル・ウッド)に、一目惚れされる。
高校生のトーブたちは海に行く途中だった。 ハーレンを誘うと、彼はバイトを辞めてついてくる。 あとは2人の突然の愛情物語となる。 ちょっとここからすでに苦しい展開である。 エドワード・ノートンとエヴァン・レイチェル・ウッドでは、年齢が釣り合わない。 しかも、突然の恋も取って付けたようで、不自然きわまりない。 この主題をサバーピアというのは無理である。 2人の間を反対する父親が登場する。 頑固な父親は定番だが、最近では見なくなった。 物わかりの良い父親が多くなっており、この映画では事態は反対で、これが多くの実際の父親像かも知れない。 最初のうちは、いい人だったハーレンだったが、実は狂気の爆発前だったという展開をたどる。 いわば正常な顔をした狂気といったらいいだろうか。 狂気が外見であれば、区別が付くので近づかない。 しかし、いい人の外見で狂気は、警戒心をもたせないので、事態ははるかに深刻な被害が起きる。 とくに子供には免疫がない。 この映画でも、トーブとその弟のロニーが、簡単にひっかかってしまう。 この狂気は気持ちが悪くて、見ているのが辛い。 しかし、話としては単純で、この映画に特別に語るべき点はない。 やはりというか当然というか、トーブの家庭は、父親と弟という3人家族である。 離婚か死別か分からないが、母親はいない。 弟も父親とは血のつながりはない。 血縁のあるのはトーブと父親だけだが、その2人がいがみ合っている。 終生の一夫一婦制の核家族を理想とすれば、アメリカの家族は理想から大きく外れている。 しかし、終生の一夫一婦制の核家族は、歴史限定的なものであり、けっして理想でも何でもない。 アメリカ映画では、夫婦と子供という標準家庭は、本当にたえて見なくなった。 アメリカの家族は、新たな時代に向けて、壮大な実験に取り組んでいる。 たくさんの問題を抱えていながら、アメリカ人たちはアメリカに絶望してはいないし、アメリカの将来に希望をもっているのだろう。 成人たちは子供に同じ人間であることを見せる。 だから、先進国では異例ともいえる、2.0を越える出生率を維持しているのだ。 我が国の親は、子供に自分たちのセックスを感づかせないし、自分たちがセックスしていることを知らさない。 セックスしていないと装うことが、大人であることの証であり、子供と違う証明であるかのようだ。 しかし、アメリカの親たちは、自分たちもセックスしていることを隠さない。 大人と子供に違いはないと行動する。 この映画でも、独り身の父親は、女性を自宅に連れ込んで、一緒にベッドに入っている。 高校生の娘も、ハーレンを相手にセックスをしている。 互いにその事実を知っている。 ここでは大人も子供同じ扱いである。 大人と子供は同じでありながら、親子という上下関係をどう維持するかは、非常に困難であろう。 しかし、生理精通の始まった生き物を、等価と見るアメリカ映画の視線こそ、今後を切り開くものだ。 エドワード・ノートンがダイエットして、この映画に臨んだらしく、一回り小さくなっていた。 2004年アメリカ映画 (2006.1.03) |
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