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現実のアメリカは相変わらず政治音痴で、短期的な考えで行動して、世界中に迷惑をまき散らしている。 しかし、こと映画の中では、自国を冷ややかに客観視できる自力を付けてきた。 この映画が、大手の映画会社によって製作されていることに、アメリカの成熟を見る。 アメリカもいよいよ大人になってきた。 そう感じさせる映画である。
バナナの皮に滑って転ぶ人を笑うのが、前近代の笑いだとすれば、笑っている自分を笑うのが近代の笑いである。 冷戦が崩壊した今、世界の警察官となったアメリカは、世界平和を口にして自国の利益を守ろうとする。 それはかつてイギリスがやってきたことであり、フランスがやってきたことだ。 圧倒的な国力を持った国は、どこも警察官として振る舞う。 アメリカではテロリストに対抗するため、ある国際警備組織が結成された。 何と、その名は<チーム★アメリカ>である。 ハリウッドに秘密基地をもち、リーダーのスポッツウッドの下、5人の隊員が世界を股に活躍している。 ご多分にもれず、アラブのテロリストが血祭りに上げられる。 しかし、エッフェル塔を破壊し、ピラミッドを壊すというやり方が派手すぎて、とばっちりを受けた犠牲者も多い。 当然に批判があった。 その批判の急先鋒とは、アレック・ボールドウィンを初めとする、ハリウッドの俳優連盟FADだった。 ショーン・ペン、ジョージ・クルーニー、サミュエル・l・ジャクソン、ティム・ロビンス、スーサン・サランドン、リヴ・タイラー、マット・デイモンと、本人を模した有名俳優が次々に登場する。 しかし、そんな批判は何のその、チーム・アメリカはマシンガンでテロリストを殺しまくっていた。 そんな時、独裁者がテロリストに大量破壊兵器を売りさばこうとしていると、情報が入る。 その独裁者とは、北朝鮮の金正日である。 彼が原爆を製造し、アラブのテロリストに売ろうというのだ。 それをハリウッド俳優連盟が、世界平和推進のために、賛助しているという皮肉な解釈である。 北朝鮮は原爆を作る能力があるが、アラブは暴力に訴えるだけで、単純な愚か者といった視点がみてとれる。 北朝鮮といえば、東アジアでは最も後進国である。 その北朝鮮にすら馬鹿にされているのが、アラブの知能程度だとこの映画は描く。 これは事実であろうし、我が国では非常識かも知れないが、世界では標準的な常識的な見方だろう。 ここに上げられている役者は、ハリウッドでも左翼として有名なのだろう。 平和を口にする左翼が、一回りして実は世界の破壊者と同じだという。 この解釈はなかなかに含蓄がある。 おそらく俳優本にの許可はまったくなしに、本人に模しているだけだから、この映画を見た本人は激怒したはずである。 しかし、左翼の胡散臭さは確かにあって、平和を口にするには覚悟が必要である。 この映画は、あやつり人形が演じている。 そのため、実写でやったら許されないことも可能で、徹底したパロディがこれでもかと繰り広げられる。 ジョージ・W・ブッシュ、ジョン・ケリー、マイケル・ムーア監督といった、実在の人物に対する皮肉にとどまらず、セックスシーンや嘔吐のシーンなど、露悪的なまでに衝撃的である。 こんな映画がアメリカで公開され、世界に配給されるというのは、言論の自由の国といえども考えてしまうだろう。 公開禁止となる国がでても不思議ではない。 ところで、本サイトは人間が演じる実写映画を好み、しかもフィクションを表現の最上としている。 そのためノンフィクションの、こうした映画には高い評価を与えない。 あやつり人形を使ったり、童話仕立てにすることによって、体制批判をおこなうのは有効だと認めはする。 童話仕立てのあやつり人形が、途上国での為政者批判の役割を、果たしてきたことは事実である。 しかし、先進国での表現としては、いささか幼稚であり、パロディだけという主題にも首を傾げる。 2004年アメリカ映画 (2005.08.02) |
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