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日本で公開される初めてのウルグアイ映画だとか。 典型的な途上国の映画で、のんびりとした不思議な雰囲気である。 高齢者の生活を描いているのだが、 この映画を撮ったのは、驚くべきことに31歳の若い男性2人である。 途上国の若者ならもっと他に描くことがあるだろうに、何を好んでこんな主題を取り上げたのだろうか。
ハコボ(アンドレス・パソス)の生活は、判で押したように規則正しい。 1人者の彼は、朝、近所の食堂で、コーヒーとパンを食べる。 そして、自分の工場へ出勤する。工場のシャッターの前には、永年勤めてきたマルタ(ミレージャ・パスクアル)が、決まった時間に待っている。 ハコボが鍵を開けて工場に入る。 同じ朝の場面が、2度3度と繰り返され、2人の行動が儀式化していることが強調される。 この工場は靴下製造を営んでおり、従業員は他に2人いるだけの小さなものである。 ハコボは最近まで、母親の看護をしていた。 その母親も死んでしまい、これからお墓をたてようかというところである。 お墓をたてるにあたっては、ちょっとした儀式をやる。 そして、ハコボの家に泊まることになっている。 ハコボは独身だが、何を思ったのか、弟の手前だけ、マルタに奥さん役を演じてくれと頼む。 平然とそれを受け入れたマルタは、奥さんになるべく仕込みを始める。 結婚写真を撮ったり、指輪をあわせたりと、偽装工作が進む。 小さな工場の経営者と、長年仕えてきた女性従業員という関係は、意味深長である。 ましてや2人とも独身となれば、愛人関係だと言ってもおかしくない。 ハコボはまったく彼女に興味はないが、マルタのほうは満更でもなかったようだ。 美容院へ行ったり、どんどんと美人になっていく。 彼女の性格付けと彼女の変容ぶりが、この映画の見所だろうか。 ハコボとマルタ、それにエルマンの織りなす関係が、何かちぐはぐながらも人情味溢れるものへと変わる。 人間の孤独と愛情を、乾いたユーモアを交えて、淡々と描き続ける。 役割の厳しい途上国の人間関係。長年一緒に仕事をしてきたといっても、あくまで経営者と従業員である。 必要なこと以外ほとんど口をきかないマルタだが、社長のハコボには一目置いている。 しかし、数日一緒に生活してみると、ハコボはつまらない男だった。 少しも男らしくない。 弟のエルマンのほうが、自分を女としてみてくれた。 そうでありながら、2人の男たちに失望してしまう。 エルマンが帰国すると、すぐにマルタはハコボの家を離れるが、深い孤独におそわれる。 ハコボと離れることが悲しいのではない。 人間に失望したことが悲しいのだ。 こんな達観した視線を、30歳の若者がもってしまうのだろうか。 映画自体は、あまりにものんびりしすぎて、やや興ざめだが、この映画主題はきわめて文学的である。 途上国の視線は、人間存在の本質に迫ろうとするので、とても長い。 人間を複雑な思考をする生き物だと、監督たちは考えているのであろう。 決まり切った解答をみせない。 観客に問いを投げかけて、そのまま終わっている。 こうした映画の作り方は、情報社会化した世界のものではない。 先進国では思考が細分化されて、人間の全体像を描くことが難しくなっている。 ユーモアとアイロニーを交えて、淡々と描く様は独特の価値観を感じる。 映画の作り方は、きわめてオーソドックスで、カメラは動かない。 きっちりしたフレームワークで、画面構成に美意識がある。 3人が旅行に行くピリアポリスのホテルは、古い様式をよく残しており、とても美しい。 アジアにあるクラシックホテルの雰囲気をもっており、一度行ってみたくなった。 富士フイルムが使われており、フジ特有の色だった。 2004年ウルグアイ、アルゼンチン、独、スペイン映画 (2005.05.08) 河畔望論へ |
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