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映画は観念が作らせるものである。 映画は本質的にフィションである。 虚構を作ることによって、制作者のメッセージを伝え、観客を楽しませるものだ、と当サイトは考えている。 そのため、ドキュメンタリーと称する映画には、あまり興味がなかった。 しかし、この映画を見に行こうと誘われたので、映画館に向かった。
結論から言えば、見て損のない映画である。 何よりも強く感じたのは、制作者の表現意識が直接的に画面に展開されている。 表現意欲の強さは、フィクションとしての映画以上である。 また、主題がはっきりしているので、使われているカットが実に効果的である。 映画は、フロリダ州での選挙から始まる。 当初、ゴアが優勢だったが、ブッシュが勝ったことになり、結局ブッシュがアメリカの大統領になった。 その後、9.11があり、アフガン侵攻があり、イラク戦争が始まるわけだが、問題ははるかに以前から進行していた。 9.11の時に、ブッシュは小学校を視察していたが、その瞬間のブッシュの映像が印象的である。 ブッシュ一族の利権まみれを、丁寧に描いていく。 そして、9.11後に、イラクとの戦争にいたった大統領の政策に疑問を投げかける。 この映画は、イラク戦争が泥沼化したから、撮影を始めたのではない。 初めからブッシュ一族の体質に焦点を当てている。 ブッシュ一族は、サウジアラビアの王族と深い関係があり、かつてからサウジ系の会社の顧問を勤めていた。 とりわけ、親ブッシュが大統領だった時代、子ブッシュはサウジ系の会社から、ふんだんに資金援助を受けていた。 それは大統領になっても変わらないらしく、結局ブッシュはアメリカ国民の利益のためではなく、自分の利益のために国民を犠牲にした、とこの映画はいう。 9.11直後の13日、サウジアラビア人が大挙して、アメリカから出国した。 このときは、アメリカ全土に航空管制がしかれており、民間航空機はまったく飛行できなかった。 奇妙なことだ。 アラブ系の人間が、9.11をおこしたとされるのだから、当然に足止めをして調査すべきである。 ブッシュがやったことは、9.11を調査することではなく、調査の邪魔をすることだった、と映画はいう。 事件の真相がどうだったかは、歴史が明らかにするだろうから、ここでは論じない。 しかし、イラク戦争でアメリカ人の血が流され、またアメリカが孤立しようとも、この原因を作ったのはアメリカ人である。 決断したブッシュに、戦争責任があるのはもちろんだが、ブッシュを選んだのはアメリカ国民である。 まちがっても、国民は騙されたとは言えない。 最も自由がある国の選挙で、ブッシュが選出されたのだ。 あのナチでさえ、ドイツ国民の選挙で選出されたのだ。 我が国では、軍部の独走というが、一部の独走ということはない。 国民が支配者を選ぶのだ。 今後の歴史の展開には、アメリカ人が責任をどうとるか、とても興味がある。 順当に行けば、11月の大統領選教では、ブッシュが負けるだろう。 しかし、戦争で失った命は戻らない。 国の政治組織が動き出すと、その影響は計り知れない。 今時大戦もそうだったが、国家の行動は膨大な影響力を持っている。 ドキュメンタリーには好意的ではない当サイトだが、この映画には星を一つ献上する。 それは猛烈な愛国運動のなかで、この映画を撮った勇気に捧げるものだ。 インディペンデントとは言え、映画を撮るのは隠れてやるわけにはいかない。 厳しい反対運動のなかで、監督は自分の意志を貫いた。 奥さんも子供いる彼には、おそらく身の危険もあったことだろう。 これは誰にでも出来ることではない。 飢えた子供に文学は何もできない。 映画も同様に、飢えた子供を満腹にすることはできない。 現実の前には、観念の表現は無力である。 しかし、観念の表現が現実化するときには、猛烈な反対に出会い、観念が現実に試される。 映画製作者はこの試練に良く耐えた。 表現に賭ける姿勢は、どんな表現分野でも同じであろう。 脱帽である。 2004年のアメリカ映画(2004.09.03) |
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