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ざらついた画面、短いカット、時間を前後させた構成など、 さまざまな手法を使って、生命の神秘を描こうとする。 制作者の意欲は理解するが、主題自体がやや古くなっている感じがして、感興が伝わりにくい。
人生の大半を刑務所で過ごしたジャック(ベニチオ・デル・トロ)は、出所して2年たつが、 今ではキリスト教に没頭して敬虔な信者である。 彼は本心から神を信じており、その熱心さに奥さんも、いささかあきれ顔である。 そんなとき、彼は男性とその子供を、ひき逃げしてしまう。 そして2人の子供は死亡、男性は死亡の直前に心臓移植される。 心臓移植を受けるのは、数学者のポール(ショーン・ペン)である。 これが数学者にはまったく見えない。 物語としても、奥さんと確執があるので、なぜか訳ありに見えてしまう。 ひき逃げをした男と、心臓移植と来れば、両者が接近するのだろうと予測がつく。 心臓の提供者がどんな人物だったか。 それに興味を持ったポールは、裏の手を使って、心臓を提供した男性の妻クリスティーナ(ナオミ・ワッツ)を探し出す。 医者をはじめ周りの誰もが反対するなか、失意にいる彼女に近づき、とうとう肉体関係まで結んでしまう。 心臓の提供者に興味を持つのは理解できても、その妻と肉体関係を持つのは不可解である。 ポールの奥さんは一度中絶しており、不妊症になっていた。 人工授精で妊娠することを決意するが、彼は奥さんが中絶したことを知らなかった。 奥さんの中絶を知って、クリスティーナに執着していく。 当然のこととして、奥さんとの関係が崩壊していく。 犯罪者の悔悟と信教、心臓移植と生命の不思議さ、 夫と子供を殺されたことへの復讐心と男性への恋愛感情、やはり不自然である。 それぞれに一本の映画なりうるくらいに重い主題である。 それを一本の映画の押し込んでしまったので、何が言いたかったのか判然としなくなった。 だから、ジャックが演じるこの部分には不自然さはない。 問題はポールが心臓提供者を捜し出し、奥さんを捨ててまで、 その遺族である女性に執着していくことである。 そのうえ、クリスティーナはポールが臓器の被提供者であると知ってからも、肉体関係を続ける不思議さである。 心臓提供者を知りたいという気持ちは理解できても、 交通事故の加害者への報復に繋がっていくのは理解できない。 人間は死ぬと、21グラム軽くなるという。 その21グラムに、霊がこもっているかのような表現で、このあたりも理解を超えていた。 メキシコ人のクリスチャン監督が、キリストに捧げる映画を撮ったのだろうが、 映画としては未整理としかいいようがない。 ジャック役のベニチオ・デル・トロは、はまり役だった。 しかし、ナオミ・ワッツの品のなさが、ちょっと異常なほどだったし、 彼女が作ってきた家族と不釣り合いだった。 そのうえ、ショーン・ペンを数学者にしたのは、ブルース・ウィルスの医者より、はるかにミスキャストである。 2003年のアメリカ映画 (2004.09.03) |
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