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恋人が死んでしまい失意のそこにいる女性(チョン・ジヒョン)が、新しい恋人にきつくあたるというコメディだが、なかなかに凝った脚本である。 酔っぱらった女性が、地下鉄のホームの端に立っている。 電車が入ってきて、彼女ははねられそうなときに、男性キョヌ(チャ・テヒョン)が辛うじて止める。 しかし、酔っぱらった彼女は、いっこうに気にするでもなく電車に乗る。 と彼女は、年寄りを前に立たせた若い男性に、席を譲れと恫喝をかける。 元気のいい女性である。
酔っぱらった彼女は、乗客の頭の上にもどしてしまうが、その男性は怒ったりとがめることはない。 彼女が床に倒れてしまうと、キョヌに連れの女性は恋人だろう、介抱してやれと言う。 彼は仕方なしに、彼女を背負ってホテルまで連れて行く。 翌日、彼女は何も覚えていないどころか、キョヌに暴力的な対応である。 とにかく彼女はキョヌをサディスティックなまでに、引きずり回すのである。 一方、キョヌは7歳まで、女性として育てられたので、きわめて受動的で失恋した彼女を癒そうとする。 キョヌのおばさんの子供が、彼女の死んだ恋人だったり、地下鉄の中でもどされた老人と、木の下で出会ったりするが、コメディではご都合主義は許される。 むしろ2人の主人公たちが、いかに常識から外れて、可笑しいかを見るべきで、そうした意味では充分に良くできたコメディである。 わが国の映画が叙情の極みを描くのに対して、この映画はやや突き放して人間を描いているが、それでも西欧諸国のようには叙事的ではない。 やはりアジア的というか、ウエットな人間関係が色濃く、人間関係のとらえ方にアジアの共通性を感じる。 女性の地位や社会進出なども、わが国と同様もしくは少し進んでいるような感じである。 女性はおとなしく、可愛いのが良いとキョヌは思っており、韓国の男性たちは皆そう思っているだろう。 それはスクリーンの裏から伝わってくるが、韓国の若い女性たちはもっと強くなっているようだ。 恋人の死が彼女に与えた心痛を、キョヌが癒すというのが話の骨子だが、心の動きを上手く映像化している。 そうした内心を前提に、強がる女性とそれを癒そうとする男性の組み合わせは、ユーモラスでもあり説得的でもある。 しかし、この組み合わせは、女性が自立過程にいる場面でのみ成り立つ。 ほんとうに女性が男性並みになれば、女性のわがままとも思える対応は許されない。 女性差別がある社会での話である。 主人公の女性の趣味は、脚本を書くことで、それをキョヌに読ませる。 もちろん、面白いと言わなければ、鉄拳制裁が待っている。 しかし、自分で売り込みにはいけず、キョヌに原稿を持ち込ませる。 このあたりの心理も面白い。 また、その原稿を映画のなかで映像化してみせるが、これがなかなかすごいアクションのできである。 韓国の映画はすでにわが国を超えたのではないだろうか。 この映画全体としても、主題の設定といい、展開といい、今日的である。 しかし、映画のテンポがややのろく、映画全体が長すぎる。 総じてカットをもっと短くしても良いし、タイムカプセルのシーンは大幅にカットしても良い。 コメディなのだから、大胆な飛躍や省略が許されるはずである。 韓国人なら腹を抱えて笑えるシーンがたくさんあるのだろう。 徴兵制や軍隊・脱走兵の話、「夕立」という小説や、見慣れた風景など、韓国人の常識をたくさん使っているようだ。 個々のそれは外国人には判らないが、それでも韓国人の常識だろうと、想像させるものが多く感じられた。 2002年の韓国映画 |
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