タクミシネマ        ロイヤル テネンバウム

ロイヤル・テネンバウム
  
ウェス・アンダーソン監督

 自分勝手なオヤジのロイヤル(ジーン・ハックマン)が、突然離婚すると言いだした。
子供たちは大混乱。
妻のエセル(アンジェリカ・ヒューストン)も困惑の状態だったが、素早く立ち直り、子供の教育に励む。
そのかいあってか、長男チャス(ベン・ステラシー)は子供ながらに立派なビジネスマン。
長女マーゴ(グウィネス・パトロネス)は天才といわれる文学少女。
次男リッチ(ルーク・ウィルソン)は若き天才テニスプレーヤーである。

前宣伝のビラから

 それから何年かたって、ロイヤルは子供たちを集めて、余命いくばくもないので、家族水入らずで過ごしたいという。
なんと勝手な、と妻と子供たちは憤るが、仮病をつかって子供たちと同居してしまう。
もちろん仮病がばれて、てんやわんやになる顛末を描いたコメディである。

 予告編では、面白そうな展開を予測させたが、本編は面白くなかった。
まず、登場人物の性格設定が、やや突飛に過ぎて、しかも似ているので、こんがらかってしまうこと。
妻の恋人はいいとしても、長女の恋人や夫、次男の生き方など、すべてが無関係だから、その説明だけで長々と時間がかかってしまう。


 物語を始めるにあたって、登場人物の説明や、話の前提の説明が必要ではあるが、
物語の進行になじんで、それらを織り込んでいく必要がある。
ただ説明だけを、ばらばらに繋ぎあわせただけでは、話があちこちに飛んでしまう。
映画製作者たちは、事前に脚本を読んで知っているから、個々に説明しても違和感なく馴染んでいくだろうが、
観客は唐突な話を次々に突きつけられても、戸惑うばかりである。
しかも、物語がなかなか始まらないから、すでにして飽きてしまう。

 最初の導入で、観客の心をつかめないと、あとの展開は非常に苦しくなる。
だから、登場人物の説明など、途中ですれば良いのかも知れない。
そのくらいに物語の流れを優先しないと、観客はついてこないだろう。
それぞれの登場人物たちは、達者な演技をしているが、物語に引きずり込むような中心がない。


 この監督も映画好きで、昔の映画を映画をたくさん見ているだろう。
それは映画の端々から判るが、もっと観客をひきこむ術を知るべきだろう。

2001年アメリカ映画   

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