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エブリバディ フェイマス   ドミニク・デリュデレ監督

  さえない中年オヤジだが、娘の歌唱力だけには惚れ込んでいる。
しかし、娘のマルヴァは歌は好きだが、オヤジの干渉がうるさくてたまらない。
しかも、不細工な様相なので、コンテストに出るも落選ばかり。
子供相手の人形芝居だけが、彼女の生き甲斐だった。
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 ジャンの勤めていた会社が倒産、45歳にして失業者となる。
娘を売り出そうと画策するジャンは、人気歌手のデビーと偶然に遭遇する。
と、彼女を誘拐し、自分の作った歌 「ラッキー・マヌエロ」をディレクターに編曲・作詞させ、しかもマルヴァにオーディションまで受けさせる。
これがトントン拍子にすすんで、マルヴァは一躍人気歌手というハッピーエンドだが、なかなかに上手く作られている。

 ジャンが失業。
失業から睡眠不足。
睡眠薬を買う。
デビーにその睡眠薬を飲ませて誘拐、と話が実にスムースにすすんでいく。
デビーの趣味が車の修理であることや、ジャンの若い友人の失恋など、充分に伏線が効いており、話に無理がない。
ただひたらすら娘かわいやに、ダメオヤジのジャンは誘拐までして、娘を売り込む顛末をペーソスとともに描く。

 芸能界にコネがないと、入れない事情はどこでも同じである。
しかも、一度コネができると、話は面白いようにころがる。
所詮、人気稼業といってしまえばそれまでだが、何が受けるか判らないから、何でもありの世界なのだろう。
このあたりの納得も、わが国と共通している。

 ジャンの若い友人のキャラクターも良い。
同棲している女性に学費を払ってまで、研究生活を続けさせているが、彼女は学会だと言ってマドリッドへ、3週間も行く。
しかも飛行場では妙な男が現れた。
さすがに暢気な彼も気がついて、落胆である。
そんな背景があるので、彼を誘拐に誘い込むと、渋々ながらも計画にのる。

 デビーのディレクターは、マルヴァの売り出しに誘拐事件を利用する。
誘拐現場とスタジオを結んで中継生放送し、お涙ちょうだいの演出が功を奏し、マルヴァのテレビデビューは大成功である。
前半はやや鈍かったテンポも、誘拐以降は滑らかになって、一気にエンディング。

 誘拐の片棒を担いだ若い彼は、なんとデビーと恋仲になり、最後には2人は恋人となってオーストリアへ行ってしまう。
デビーは高収入など放り出し、彼との生活に浸りきり。
彼の元恋人は、マドリッドで男とよろしくやっていたら、彼とデビーの熱々シーンをテレビで見て、おもわず隣の恋人にビンタ。

 失業、親子愛、芸能界の裏事情、誘拐、マスコミなど、いかにも現代的な話題を楽しく見せてくれた。
地味な演技だが、出演者たちが上手かった。
コミック仕立ての楽しい映画として、かなり笑えるし、後味の良い映画だった。

2000年ベルギー・フランス・オランダ合作映画   

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