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この作品のようにレイトショーのみの公開だと、見るのがなかなか大変である。 多くの観客動員が見込めないときは、レイトショーのみでも仕方ないのであろう。 しかし、レイトショーのみであっても、作品の内容にはあまり関係がない。
葬儀屋にうまれた2人兄弟を、主人公にしたコメディである。 内容はかなり凝っており、二転三転して考えさせる。 兄のイクオ(ぜんじろう)は、小柄で女性にはもてない。 長男だからと親からは辛く当たられてきた。 弟のタツオ(剣太郎セガール)は、長身で男前と言うことになっている。 タツオが美男かどうかは、意見の分かれるところだろうが、映画の中では美男という設定である。 タツオは母親(田中裕子)が手塩にかけて育てたらしい。 イクオは葬儀屋を嫌って、日本一の漫才師になるとタツオとコンビを組んだ。 イクオが脚本を書く。 しかし、芽が出ない。 今ではストリップ小屋での時間つなぎである。 むしろ生活費は、実家のバイトで稼いでいる。 嫌々ながらも葬式のバイトをしていると、幼なじみの文江(みれいゆ)の母親の葬式に出くわす。 にもかかわらず、彼は熱を上げ続ける。 ストリップ小屋の漫才師のまえに、有沢 (香川照之)というTVディレクターが現われた。 テレビに出るように誘われたのである。 半信半疑ながらテレビに出ると、彼らの言葉のほとんどは、ピーピーといった音がかぶされて、視聴者には届かなかった。 卑猥ない言葉だから放送コードに引っかかり、ディレクターが消していたのだった。 しかし、それが大当たり。彼らの運命は激変する。 ここからの展開が、なかなかに意味深い。 もてるタツオは巨大な男性器をもっていたが、じつは巨大すぎるがゆえに童貞だった。 タツオにセックスをさせると、セックスの良さにめざめた彼は、次から次へと女性を引っかけた。それをイクオが盗み見して脚本に仕立てる。 美男のタツオにむらがる女性はいくらでもいる。 実録ポルノ漫才として彼らは、有名になっていく。 しかしもちろん、これでおさまるはずがない。 夢見るイクオに好意をもっていた文江は、TV出演から有名人になった彼に失望する。 女性には不自由しないタツオだが、一夜の関係ではなく、イクオのように恋愛がしたいと言いだす。 異性に満たされていながらの愛情渇望という、この台詞は効いていた。 多くの日本映画がたやすく愛を口にするが、ほとんどの場合に空言に聞こえる。 巨根にセックスを象徴させ、セックスと愛情は別だというなかで、女性には不自由しない男性の愛情渇望といった話は、実によく伝わってきた。 そのために、みずからタツオの相手になる。 それを見せつけられたイクオは動転。 このあたりは仕事と、愛情のあいだで揺れ動く、イクオの心理描写が上手い。 結局、イクオとタツオのコンビは解消され、イクオは葬儀屋に戻り文江と結ばれる。 しかし、今度はイクオと文江でコンビができる。 漫才に対する大阪人の入れ込みが、感心するほど感じられて、関東人の私には新鮮だった。 TVディレクターのいい加減さ、サラリーマン的テレビ業界の無責任さなど、いくつかの隠し味をまじえて、物語はすすむ。 葬儀屋という設定も、それなりに考えさせるし、2人兄弟の落差もおもしろい。 そして彼らにからむ文江の存在も、ある時はコミカルになり、そして妊娠した子供の親はどちらかと、シリアスになる場面もある。 最後は唐突ながらも、ハッピーエンドになるのは、娯楽の定石である。 設定などは面白く、この監督がいろいろと考えていることは伺えるが、やや未消化が目立つ。 45歳という年齢を考えれば、もう少し話題を整理して、きちっと主題を絞り込むべきだった。 テレビ界のいい加減さはいいとしても、仕事と愛情に悩む姿か、兄弟の確執か、もう少し判りやすくすべきだと思う。 主張すべき主題と主題を支える背景とは、きっちりと分けたほうが良い。 たくさんの話題を盛り込みすぎたので、主題がぼやけてしまい、言いたいことが伝わりにくくなっていた。 美人だった田中裕子がぽっちゃりと太って、いかにもその辺にいそうな気の強いおばさん、といった感じがよくでていた。 また岸部一徳はいつもの演技ながら、ぼそっとした感じが中年のオヤジらしく、自然で好感が持てた。 イクオ・タツオ・文江の3人は、がんばってはいたがまだまだ未熟である。 しかし、下手な役者たちを演出して、見せるレベルに持ち上げる力を、この監督は持っているようにも感じた。 2・3カットばかり色がとんでいたが、それでもストリップ嬢の肌の色など、発色がとても良いシーンが多かった。 おそらくライティングには、そうとうのお金がかかっているに違いない。 また、個々のシーンもそれなりに絵になっており、とくに文江が西瓜をもって土手を下るシーンは、きれいな色彩と決まった構図でみせていた。 2000年の日本映画 |
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