タクミシネマ        ハートブレイカー

ハートブレイカー  デヴィド・マーキン監督

 女性結婚詐欺師のマックス(シガニー・ウィーバー)とペイジ(ジェニファー・ラヴ・ヒューイット)。
彼女たちは親子でコンビを組んで、結婚したがる男をカモにしている。
男を色気で釣っては結婚させ、そのあと浮気の現場に踏み込んで、離婚の慰謝料を稼ぐ。
結婚相手が母親のマックスなら、浮気の相手が娘のペイジである。
二人で息を合わせて、男たちを籠絡させるコメディである。

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 結婚詐欺というおもしろい職業を生業にしているが、この映画の主題は結婚詐欺ではない。
母子物とでもいったらいいだろうか。
独立していく子供から、母親が自立できないのが、話のテーマである。
娘が独立を宣言したが、母親は心配で仕方ない。
自分は男にだまされて、妊娠させられてポイだった。
自分の二の舞になるのが目に見えている。
だから、もっとしっかり教育しなければならない。
まだ独立には早いと、母親は思うわけだ。

 主題も良いし、出演者も良い。
さぞ面白いコメディだろうと、期待して見に行った。
しかし、結果はさっぱりだった。
たしかに面白い主題ではあるが、ちっとも笑えないのだ。
マックスを演じるシガニー・ウィーバーにしても、大富豪に扮するジーン・ハックマンにしても、みな芸達者である。
若いジェニファー・ラヴ・ヒューイットにしても、決して下手ではない。
場所の設定だって、充分に楽しめる。
アン・バンクロフトがちょっとだけでており、脇役にも不足はないけれども、つまらないのである。

 この映画は主題は良いが、面白くない典型かもしれない。
とりわけコメディの場合、主題や展開もさることながら、笑わせる間のようなものが大きくものを言う。


主題より笑わせる技術が物をいう。
それにアメリカ人の笑いと、わが国の笑いでは少し質が違うような気がする。
おかしさのニュワンスが、映画として伝わらないと、笑いをとれない。
この映画は、個別の役者たちの熱演もあったし、色気も充分にあったが、どうしても笑えなかった。
映画のおもしろさは、主題だけが支えるのではない、それを確認させられた。


 シガニー・ウィーバーは1949年生まれだから、52歳である。
鍛えた身体で、スタイリッシュではあるが、肉体をさらしてのベッドシーンにはもう皮膚のハリが足りない。
年老いたクリント・イーストウッドのベッドシーンがいただけないように、女性でも肌に張りがなくなったら、もう裸をさらすのは厳しい。
彼女の個人的な魅力は充分に認めるけれど、裸で勝負というには少々年をとりすぎている。
年齢というのは残酷なものだ。

 この映画は終盤で、露出の取り間違いが3カットあった。
同じポーズだったから、一つのシーンとして撮影したのだろう。
それを3カットに編集したのだと思が、適正露出を保つのは難しい。
それに広角のレンズで寄っているシーンが多く、平行が歪んでいるのが気になった。
人物の後ろの建物や、壁の目地がカーブしているのは、どうしたことだろう。
 
2001年のアメリカ映画

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