8千メートル近いヒマラヤの山頂付近での救出劇で、お話自体はたわいもないもである。 お金と時間をかけたハリウッド特有の映画で、雄大な娯楽作品に仕上がっている。 家族愛につつまれ、雄大な景色のなかで、ハラハラドキドキあり、勇気の発揮がありと、正月映画として充分に楽しめる。 最近の登山システムにも、あらためて目を開かれる思いがする。
父親と子供2人で、ロック・クライミングをしているシーンから映画は始まる。 他の人の転落事故に巻き込まれ、3人は1本のザイルに宙づりになる。 アンカーが3人の重さに耐えられないと判断した父親は、息子のピーター(クリス・オドネル)にザイルを切れと命令する。 それによって父親は落下して死亡するが、ピーターと妹のアニー(ロビン・タニー)は命が助かる。 しかし、ピーターがザイルを切断したことがアニーのトラウマとなって、2人兄妹はわだかまりをもって疎遠になる。 話はとんで3年後のヒマラヤ。 ピーターは自然写真家となり、ヒマラヤにやってくる。 するとそこにアニーがいた。 彼女はエリオットの主宰するK2登山隊のメンバーだった。 台風が近づいているのを無視して、彼等はK2へのアタックを開始した。 彼等は頂上付近で雪崩にあい、クレバスへ転落する。 三人が生き残るが、救出は困難をきわめる場所である。 誰もが尻込みするなか、ピーターは救助隊を組織し、自ら救助に向かう。 6人、3パーティが救助に向かうが、助かったのはアニーだけ、しかも救助隊も4人が死亡する。 本格的な登山から離れていたピーターがK2に登ること、高地にもかかわら平地と同じずスーパーアクションの連発、滑落する人間をピッケルアンカーで停めること、ベースキャンプから7千メートル付近までヘリコプターで行っていきなり活動すること、パキスタン軍がニトロの扱いを知らないこと、などなど数えたらきりがない。 しかし、心理描写における人間理解へのご都合主義と違って、娯楽映画におけるこうしたご都合主義は許されると思う。 この作品は純文学的な指向をもつものではない。 娯楽映画は娯楽を目的にして作られている。 純粋な娯楽目的のこうした作品が、オスカーの対象になることはない。 この作品は、人間のあり方を問う作品ではない。 だから、この作品が目的とした範囲で楽しめばいいのだ。 雄大な景色、困難な撮影場所、最新鋭の登山装備など、楽しめるものはいくらでもある。 変わるのは人間のほうだ。 古典的な装備で登る人たちにも、ハイテクで武装した人たちにも、山は同じように対応する。 もちろん男性にも女性にも、自然はその態度を変えることはない。 いつでも自然には謙虚に接する必要がある。 謙虚な姿勢がハイテクを生んだのだし、ハイテクは自然を解明するものだったのだ。 だからといって、ハイテクを否定するつもりは毛頭ない。 技術の進歩が、人間の輪郭をよりはっきりとさせるのだ。 ハイテクを経験したからこそ、古典的な装備にも尊敬が払えるのである。 膨大な人とお金をつぎ込んだ映画で、それなりに楽しめる。 劇場パンフレットには、撮影隊のロケ基地の写真が写っているが、その写真だけでもちょっとしたものである。 しかし、これだけお金をかけた映画と、数人で作られた低予算の家族映画と、どちらが感動を呼ぶかというと、これがまったく判らないのである。 創造とはお金をかければいいということではない。 それもまた、この映画から知るのである。 2000年アメリカ映画 |
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