タクミシネマ          愛のエチュード

 愛のエチュード     マルレーン・ゴリス監督

 「ロリータ」で有名なナボコフの原作「ディフェンス」を、映画化したものだ。
天才チェス・プレイヤーの孤独と狂気に、上流階級の娘が好意をもってしまう。
チェス・プレイヤーのルージンには、ジョン・タトゥーロが扮し、相手役の娘ナターリアにはエメリー・ワトソンが扮している。

愛のエチュード [DVD]
 
劇場パンフレットから
 チェスをわが国におきかえれば、将棋である。
天才将棋プレーヤーといえば、王将の坂田三吉だろか。
しかし、将棋とチェスの背景はずいぶんと違って、庶民の将棋にたいして、チェスは貴族のものだった。
この映画もそれが売りになっている。

 1929年、場所はイタリアのコモ湖畔。
チェスの世界選手権が開催されようとしている。
そこへルージンがやってきて、決勝戦まで進む。
会場となったホテルには、観戦に来た人たちでごったがえしている。
映画は、彼の生い立ちと、選手権のようすを重ねてすすむ。

 上流階級に生まれた彼だが、子供の頃、父親が妻の妹とできてしまい、母親は自殺してしまう。
両親の不仲をたっぷりと見せつけられた彼は、屈折した心で子供時代を成長する。
心を閉じた彼は、チェスにのがれるが、あまりののめり込みにチェスを禁止されてしまう。
学校からも転校を進められるしまつ。
そこへチェスの才能を買ってでた人物ヴァレンチノフ(スチュアート・ウィルソン)が現れる。


 ヴァレンチノフは、ヨーロッパ中にわたってルージンを連れまわし、賭けチェスや懸賞金稼ぎをやらせる。
しかし、途中でルージンの才能を見限り、捨ててしまう。
世界選手権の会場でルージンを見たヴァレンチノフは、驚き嫉妬にもえ、彼の優勝を阻止しようとする。

 母親とホテルにきていたナターリアは、ルージンに一目惚れ。
ルージンも一目惚れしていたので、二人はたちまち結ばれる。
チェスのゲームは何日にもわたって続く。
ゲームに疲れたルージンの神経を、ナターリアの身体がもみほぐし、彼は勝ち進む。
母親の反対を押し切って、ナターリアは結婚を決意。
緊張から精神に異常をきたしたルージンは、決勝戦の途中で入院する。


 ナターリアに心を寄せるササール伯爵(クリストファー・トンプソン)や、選手権の中段などをはさみながら、映画は進んでいく。
舞台になったのが、ヴィスコンティの別荘である。
この建物が超豪華で、昔の貴族がいかに裕福だったか、陶然とする。
チェスは貴族のゲームといわれているので、出演者たちも上流階級の人たちばかりで、豪華な衣装やインテリアが見物である。

 チェスのような論理的な遊びは、近代化と平行現象だというのは、「近代を準備する者たち」に書いているので、ここでは触れない。
コンピューターとチャンピョンの試合が有名になるが、将棋とちがって駒が生き返らないので、将棋よりいくらか単純ではある。
それにしても、どんな分野でも才能というのはある。
そして、天才はいる。


 天才の才能とは、神からの贈り物であると同時に、狂気とも隣り合わせている。
子供時代のトラウマと重なり、彼はとうとう窓から投身自殺をはかる。
涙ながらのナターリアは、両親とともに彼の埋葬に立ちあう。

 天才の人生に物好きな女性をからめ、狂気と恋愛を描いているが、物語の展開が平凡である。
結末も分かってしまうようで、あまり驚きがない。
画面が美しいのかといえば、それほどでもない。
見るのは時間の無駄だというほどではないが、面白い映画を作るのは難しいものだ、と感じさせもする。

 途中でしばしばピントがあっていないシーンがあった。
最初は上映のほうのピンぼけかと思っていたが、あったりぼけたりするので、フィルムのほうがピンぼけなのだろう。
画面全体のピントを合わせるのができず、中心部だけピントがきていない劇場があったりするが、この映画にかんしては劇場に責任はないようだ。

2000年イギリス・フランス合作映画

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